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ミステリの祭典

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死の記憶

作家 トマス・H・クック
出版日1999年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 レッドキング
(2022/11/11 20:32登録)
母と兄と姉を射殺して失踪した父、一人生き延びた末っ子の少年。数十年後、彼の前に現れたのは、同様の"父親による家族皆殺し事件"の研究に情熱を抱く美女ジャーナリスト。記憶に潜む事件想起の産婆役を彼女に委ねながら、現在の妻・息子との日常に、かつての家族の絶望的な情景が塗り重ねられて行く。物語は、女が下した結論・・灰色の日常に復讐する男の狂気的浪漫発作・・に絡み取られる文脈と見せかけて、アッと驚くような・・と言うより、ウぅーと呻かせられるような・・だまし絵的反転を遂げて終わる。ミステリとしては見事で、家庭悲劇としては破滅的に痛い。

No.1 5点
(2015/02/14 11:36登録)
トマス・H・クックの記憶シリーズ第1作…というより、本当に「記憶」に相当する言葉が原題に含まれているのは、本作 “Mortal Memory” だけです。
文学性豊かだとか重さがいいとかいう意見が多いようですが、正直なところ、むしろ現在の「私」の態度、愚かさにあきれた作品です。そのうちばれるに決まっている嘘を無自覚に(病的な嘘つきではないにもかかわらず)つき続けますし、S・キングの『デッドゾーン』の透視能力者じゃあるまいし、体験していない過去の出来事を勝手に「見た」と思い込みますし。
その「私」の愚行が間接的原因で起こる悲劇も、その後の「私」の執念の原動力になっていると言えなくはないのですが、必然性はあまりありません。
一家に起こった過去の惨殺事件を少しずつ暴いていく過程や、ラストで明らかにされる真相はよかったのですが、もう少し違った書き方はできなかったものかと思ってしまいました。

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