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ミステリの祭典

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検事他殺を主張する
検事ダグラス・セルビイ

作家 E・S・ガードナー
出版日1957年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2025/12/05 22:37登録)
(ネタバレなし)
 1930年代のアメリカ。カリフォルニア州南部の田舎町マジスン・シティで、青年法曹家のダグラス・セルビィは、公職選挙で現職のベテラン、サム・ローバーを見事に破って、新任の地方検事の座を初めて得た。25歳ほど年上で50代後半(たぶん)の歴戦保安官レックス・ブランドンとも協力体制を固めたセルビィだが、そんな彼の前に地元のマジスン・ホテルで、先ほどすれちがったばかりの初老の牧師が変死したらしいという情報が入る。だが現場のホテルの一室に赴いたセルビィとブランドンの前で、事態は意外な方向に広がっていく。

 1937年のアメリカ作品。地方検事ダグラス・セルビィものの第一弾。
 少年時代からこのシリーズは購入し、数十年前に全部集めてるはずだが、気が付いたら一冊も読んでなかった(汗)。もしかしたらどれか一作くらいは読んだかもしれないが、完全に忘れてる。評者のガードナーのシリーズキャラクターへの傾倒度に順位をつければ①ラム&クール②メイスン③レスター・リース④あまたの短編主人公、そして⑤番目がこのダグラス・セルビィという事になる。いや嫌う理由も遠ざける事由もなく、本当にただ何となく読まなかっただけだが。
 でまあ、いい加減にそろそろ読もう、どうせならシリーズ第一弾から……と思ったら、例によって買ってあるはずの本が見つからない。仕方なくネット古書で綺麗そうなポケミスを安めに(改めて?)買う。何十年もかけて何をやってるんだ、俺は。

 でまあ感想だが、ページが薄め(ポケミスで本文役190ページ)の一方、話は実にわかりやすくテンポよく進み、なかなか面白い。被害者の素性の反転する序盤から始めて、謎の提示も悪くない。
 何より、これは思わぬ面白さであったが、随所に覗く、新任地方検事としての抱負をそなえた主人公セルビィのやや高めの年齢の青春ミステリ的な叙述がよろしい。向こう版霧島三郎か、これは。
 確かにキャラクターは地味だが、こちとらフレンチだのウェイド・パリスだのみたいなその手のレギュラー探偵の人間味に触れて勝手に思い入れるタイプの読者なので、セルビィもまんまその対象内でウェルカム。
 なんだフツーに面白いじゃん? 

 ただラスト、かなり意外な犯人と事件の真相を見せたかったのは分かるんだけど、最後の最後の5ページでセルビィの口から語られる事件の概要の情報がいささか舌っ足らずで、ん、じゃあ、あれは何だったの? あの件は? というひっかりがいくつか残った。俺がどっか読み落としていたり、あるいは読解不足かもしれないが、そこはもうちょっと……という感慨を生じたのもホンネ。特に写真トリックのあたりは、たぶんのちの我が国の某大家の作品に通じるものが用意されてたハズだと思うんだけど、消化不良な感じなのが辛い。
 というわけでトータルとしては面白かったし楽しめたけれど、シリーズの醍醐味はまだまだこれから二冊目以降かな、という感じもある。
 まあ少しずつ消化していきましょう(笑)。

No.1 6点 弾十六
(2018/10/29 20:49登録)
ダグラス セルビイ第1話。1937年1月出版 Country Gentleman誌連載(1936-9〜1937-1) 連載時のタイトルはThe Thread of Truth。
メイスンものでは間抜けな敵役のD.A.を主人公にして、どんな話になるのか、そこが興味深かったのですが、本作には法廷シーンが無く、ちょっと拍子抜け。ガードナー得意の複雑に入り組んだ筋立てで、サスペンスの盛り上げ方は上手です。地味で真面目な主人公ですが、公務と自分に忠実な姿は、わがまま放題、金使い放題の自由人メイスンより好感が持てます。でもやはり主人公に華が無いのは残念ですね。

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