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ミステリの祭典

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月蝕姫のキス

作家 芦辺拓
出版日2008年10月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2021/05/19 05:19登録)
(ネタバレなし)
 探偵エラリー・クイーンを尊敬して、突き詰めた論理思考を得意とする「ぼく」こと、高校二年生の暮林一樹。彼は通学の最中に、不可思議な状況の殺人事件に遭遇した。やがて成り行きから事件に深入りし、さらなる惨劇にも立ち会う一樹。そんな彼の視界には、不審を抱く対象として、とある人物の存在が浮かび上がってきた。

 序盤の屋外での殺人事件はぱっと見には平凡なれど、ちょっと状況を整理してゆくと不可思議な謎が浮かび上がる、という趣向。
 これって都筑道夫がホックの短編パズラーを(本書と同じような謎の提示の仕方をしているという意味で)「モダーン・ディテクティブ」だと、ホメていたのを思い出した。

 そんな序盤がなかなか蠱惑的だったので、これはジュブナイルなれど、ちょっとトリッキィな&小気味よくロジカルなパズラーを賞味させてくれるのかと期待した。が、残念ながら、途中からおとぎ話っぽい探偵ロマン劇の方向にいってしまった。

 ただまあ、それはそれでまったく悪いというものでもなく、たとえば評者が大昔の少年時代に、晶文社版のハードカバーで小林信彦の『オヨヨ島の冒険』を読んだ際のワクワク感を21世紀のヤングアダルト作品に再生させるなら、こうなるだろうな、という感じ。ああ、そういえば朝日ソノラマのサンヤングとかあっちの系列の作品みたいな、昭和レトロ感も漂う。
 もしかしたら芦辺センセの<ミステリジャンルへのオマージュもの>のなかでは、結構上位クラスにスキかもしれない。
 おっさんがマジメに読むのはちょっと恥ずかしいところもあるが、親戚の小学校高学年くらいの、ふだんはあまり活字を読まず、しかしミステリに関心を持ちそうな雰囲気がある子供に勧めてみたいような一冊だ。、

 ちなみにいかにも続編が書かれそうな内容だけれど、この作品はいまだ文庫にもならず、13年間、続きも書かれていないよね? 

 まあ永遠のプロローグ編のままにしておくのも意味はあるとも思うけれど、主人公たちをもう一度、再会させてあげたい思いも湧かないでもない。

No.1 4点 江守森江
(2009/06/03 10:16登録)
ヤングアダルト向けを意識し過ぎた感あり。
本格部分はあっさりで活劇部分も・・・
シリーズ化を意識したキャラ設定で、初回なので自己紹介しました的作品。

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