(2018/11/01 22:21登録)
(ネタバレなしです) 「瀕死の王」の副題を持つ本書は矢吹駆シリーズ番外編として2008年に発表された本格派推理小説で、講談社文庫版で上下巻合わせて900ページを越す大作です。作中時代は矢吹駆シリーズの時代より約10年後の1988年から1989年にかけて、舞台はフランスでなく日本になっています。時代描写に力を入れてますが昭和天皇の評価(それも批判的な)にまで踏み込んでいるのは随分と大胆ですね。矢吹駆は会話の中で語られるだけで登場しません。シリーズのワトソン役であるナディア・モガールは活躍しますが本書ではワトソン役は別人が務めていてナディアは第三者描写なのが特徴です。シリーズの特色である哲学談義がないのは個人的にはありがたいですが、それでも読みやすいとは言えません。登場人物は多く(登場人物リストを作って読むことを勧めます)、大作の割には事件数が少ないです。その分非常に丁寧に推理しているのですが、ABCにXYZ、さらにαβγまで駆使して可能性、可能性の可能性、可能性の可能性の可能性を延々と議論しているので謎解きに集中するのは大変です(私は置いてきぼりを食らってしまいました)。重箱の隅をつつくのに抵抗感のない読者向けです(笑)。
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