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ミステリの祭典

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ミレイの囚人

作家 土屋隆夫
出版日1999年06月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2023/08/24 08:12登録)
(ネタバレなし)
 1998年のある夜。32歳の気鋭のミステリ作家・江葉章二(本名・葉月~)は、かつて大学生時代に家庭教師として縁があった元教え子で、今は二十代半ばに成長した娘、白河ミレイに再会した。ミレイに誘われるままに久々に、神泉町の白河家を訪れた江葉を待っていたものは……。江葉が不測の事態を迎えたのち、港区でひとりの人物が死亡。その当人は、末期に奇妙な物言いを遺した。

 光文社文庫版で読了。
 一年くらい前に、ブックオフの100円棚で見つけて「土屋隆夫の晩年の作品か……。この時期のはあまり読んでないなあ。ひとつ読んでみるか……」くらいの興味で購入した一冊だが、なかなか面白かった。

 犯人は話の構造から先読みできなくもないが、仕掛けの手数は多く、う~むと後半~終盤まで唸らされた。

 メイントリックはバカミスか? とも思ったものの、作者の真面目な筆致で軽佻浮薄にハヤしにくい雰囲気になった。ある意味で書き手の力量に読み手のこっちがマウントを取られた気分である。

 モブの登場人物にムダに名前を与えない、サスペンス度の高いお話や謎解きミステリ部分にとって無意味な、キャラクターの外見描写なども控える、という大人の小説の作り方はとても好ましい。
 しかも本作は、作者が自覚的にそういう小説の作りにしている方向性まで、軽いメタ的な手際も交えて芸にしてあり、さらに……(以下略)。

 改めてこの作者は、老境になっても十分に楽しめる力作を書いていた大家であった。日本の、晩年のクリスティーのようだ。
 評点は8点に近い、この点数で。

No.2 7点 パメル
(2020/05/18 19:11登録)
寡作作家として有名な作者だが、作家人生は長い。この作品は80歳を超えてからだが、年齢を感じさせない筆力で驚かされる。
導入部の人気作家監禁といえば、スティーヴン・キングの「ミザリー」を頭に浮かべる方が多いと思いますが、「ミザリー」はホラー、こちらは本格推理の色合いが濃い。
本格推理と心理サスペンスを融合した野心作で、推理作家・江葉の監禁事件と新進推理作家の死亡事件がどう繋がっていくのかが読みどころ。
トリック自体はシンプルだが、ミスディレクションが巧妙なため、気付くことは難しい。また複雑なプロットを構成する手腕は見事で、真相が明らかになった時の衝撃度は高い。ホワイダニットには少し引っ掛かりますが...。

No.1 7点 こう
(2008/07/22 01:04登録)
 土屋隆夫は非常に寡作家ですがどれをとってもはずれがない作家の一人だと思います。まだ現役なのが凄いとしかいえないくらい御高齢のはずですが、不安な産声を読んだときもまだ本格作品を書こうとしている熱意が凄いと思いましたがそれから10年経ってこの本が出てびっくりした覚えがあります。
 推理作家の主人公が第一章でかつて家庭教師をしていた精神に病をもつミレイにあったがそのまま監禁されてしまう。
 そこで視点が変わり第二章でホスト殺人事件の経過が描かれ、第三章で主人公が救出され、という展開です。
 容疑者は作品中一人しかおらず、その犯人がどのように犯行に及んだのか、どうして殺人を行ったのかという動機が最後に明らかにされるスタイルが土屋作品では多いですがこの作品でも踏襲されています。
 見所となる犯人のトリックは一つですが個人的に初めて読んだトリックですので、作者の年齢を考えるとトリック考案する姿勢に感動しました。(トリック自体はアンフェアかもしれませんし小粒ですが)
 作品としての出来は全盛期の物や不安な産声よりも少し落ちると思いますし、どちらかというと最後の真相となる手記を読まないとわからない類のものですが、作品の骨格はしっかりしていると思います。また最後に少年犯罪法についても触れられており、また前例はありますが一種、本自体への仕掛けもあり水準作だと思います。

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