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ミステリの祭典

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心の砕ける音

作家 トマス・H・クック
出版日2001年09月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 7点 レッドキング
(2022/12/08 00:40登録)
" もしも地獄の光景が冬ならば、メイン州の冬景色そっくりに違いない・・・" 
凄惨な過去を持つ緑色の瞳の女、理知と冷血の兄、浪漫と熱血の弟・・いったい、誰が何を行い何が起きたのか、そもそも消えた幻の女は誰なのか、北部メイン州港町を舞台に、人物トリックを巻き込んだ、痛ましく陰惨な「カインとアベル」物語のミステリ展開・・と思いきや、クックにしては珍しく救いある終末に決着。
怒涛の救済解明は良いが、「家族Commedia大団円」は、行き過ぎかな。あれは「毒親・闇落ち」のままにしとかなきゃ。
" 忘れる事のできない痛い記憶の数々で、己自身が己自身を蝕まみ、さいなみ、苦しめて・・ " 身につまされるな

No.2 5点 ROM大臣
(2022/07/25 14:34登録)
テーマはずばり「運命の女」。現実的な兄と、夢見がちな弟。弟はいつかこの世にたった一人だけ存在する運命の相手が目の前に現れると信じている。そんな兄弟の前に、ある日突然、謎めいた美女が出現する。弟はたちまちのうちに、彼女に恋心を抱くが、困ったことに彼女に惹かれたのは弟ばかりではなかった。
これだけで恋愛文学の永遠のテーマ、三角関係の理想的な解決法への立派なチャレンジになっている。といってもミステリなので、殺人事件が起きて犯人探しが始まってしまうわけだが、それでも兄弟愛を引き裂く恋愛の非情、切なさは、これっぽっちもかすれない。

No.1 6点
(2010/06/15 14:58登録)
基本的には、語り部が秘密を抱えつつ、現在と過去とを行き来しながら話が進んでゆく、「記憶シリーズ」と同じパターンです。お決まりの純文学ミステリです。

語り手である兄キャルが、殺された弟ビリーの事件の真相と、忽然と消えた謎の女ドーラ・マーチの行方を追う話の展開です。事実を小出しにしてゆく叙述なので、事件の事実関係がもやもやしたまま読み進めざるを得ませんが、怪しげな語り口調から、事実がわからないながらも、なんとなく真相の一部にはたどり着けてしまいます(本当の結末は読めませんでしたが)。

「・・・クックがミステリを超えて、またひとつ美しくも悲しい物語を紡ぎだした。」この大げさな惹句、「緋色の記憶」なら通じると思いますが、本書にはいくらなんでもあてはまりません。どちらかといえば、意外に俗っぽい真相にやや拍子抜けといった印象です。でも後半はページを繰る手が止まらないほどだったので、楽しめる小説にはちがいなかったようです。初めてクックを読む人なら、たぶんもっと楽しめるでしょう。

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