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ミステリの祭典

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猫は手がかりを読む
シャム猫ココ

作家 リリアン・J・ブラウン
出版日1988年11月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 tider-tiger
(2019/11/13 22:59登録)
~かつては事件記者として鳴らしたこともあったジム・クィラランだったが、転職に次ぐ転職の挙句に長らく無職同然の生活が続いていた。デイリーフラクション紙にて新聞記者としての再起を計ろうとするが、用意されたポストは畑違いの美術記者。しかも社のお抱え美術批評家は町のほとんどの芸術家から嫌われ、町に軋轢を生む問題児。無知に等しい美術業界に飛び込み関係者たちの思惑を読み取りつつもうまく立ち回ろうとするクィラランだったが、とある画廊のオーナーが殺害され、事件記者へと戻ってしまうのであった。~

1966年アメリカ作品。作者本人も新聞記者であり1979年に退職されているようなので、現役の記者時代に書かれた作品ということになります。miniさんが詳しく書かれているように日本では順番が滅茶苦茶に出版されました。個人的な記憶だと1990年代前半には書店にズラッと作品が並んでいたような気がします。確か同じ頃にローレンス・ブロックの泥棒シリーズも棚に揃っていたような。今よりもはるかに不便でしたが、妙にあの頃が懐かしい。
で、本作なのですが、書店で表紙とタイトルから想像するのと、実際に読んでみたのとでは印象が大きく異なりました。
ミステリ的には猫はいてもいなくてもどうでもいい感じで、そもそもミステリとしては物足りなさを感じます。序盤は話の動きが遅くて、エンタメとしてもそれほどいい点数はつけられません。猫好きをくすぐるようなシーンは随所にありますが、猫が好きならそれだけで楽しめる話というわけでもありません。
ただ、それでもけっこう読ませます。
1966年の作品にしては古さをほとんど感じませんし、キャラもいい感じです。突出した人物はいませんが、適度に変人だったり、適度に人間味があったりで親しみやすいです。さりげなく描かれた記者連中の大らかな生態(いわゆる大新聞ではないから?)なんかも自然で好感がもてました。
芸術関係者への取材、嫌われ者の批評家及びその飼い猫との親交などが描かれた前半部分の方が好きです。嫌われ者の批評家は本当にイヤな奴なのか、彼は真に芸術を解する者なのか、あるいはインチキ野郎なのか。
後半はミステリとしての体裁を整えることに力が注がれて(当然なんですが)、小説としてちょっと余裕がなくなってしまったように感じました。
ミステリとして物足りない点、後半がやや落ちるということ勘案して採点は5点としますが、アメリカ的な大らかさとちょっと洒落た雰囲気を味わえる悪くない作品だと思います。

No.2 5点 シュウ
(2008/12/02 23:42登録)
猫につられて表紙買いしました。
ミステリとしては微妙ですが愛らしいシャム猫ココをはじめとして個性的な登場人物が多く登場するので物語として楽しめました。
ただこの犯人はちょっと・・・

No.1 5点 mini
(2008/11/23 12:07登録)
シリーズ第1作目だが、一般的には第4作目の「猫は殺しをかぎつける」から入門する人が圧倒的に多い気がする、翻訳順も先立ったし
これには事情が有って、初期3作は結構古くてアメリカでは1960年代に一旦出たのだが当時は全く受けず、第4作目などは原稿は書かれていたのだがお蔵入りになっていた
ところが年月を経て原稿を見た旦那が刊行を勧めて1986年に陽の目をみたら今度は受けて初期作も復刊されたらしい
第3作目と4作目の間が20年近くも開いているのにはこうした事情が有ったからなのである
この第1作目の「猫は手がかりを読む」では主人公クィラランが猫のココを飼う事になった経緯がたっぷりと描かれており、第2作目では牝猫ヤムヤムが導入される理由も分かる
現在ではシリーズの前期作はほど全巻出揃っており、初めてシリーズを読み出す人には第1作目から順番通りに読む方が適切だろう

「猫は~」で統一されたシリーズ題名だけを見て、”これってさラノベかお子ちゃま向きなんじゃねぇの?”と先入観を持ち、敬遠するとしたら実にもったいない
一言だと”小粋で洒落たミステリー”とでも言おうか、主人公クィラランの小生意気な会話文が魅力
ウィットの分かる大人が読んで面白いという感じで、題名から受ける印象で中高生が読んでも魅力を感じないだろう
粋な大人こそ先入観を持たずに読んで欲しいシリーズだ

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