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ミステリの祭典

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不安な童話

作家 恩田陸
出版日1994年11月
平均点6.20点
書評数5人

No.5 7点 Tetchy
(2024/10/17 00:32登録)
恩田陸氏の3作目となる本書は生まれ変わりをテーマにした物語だが、それ以外にも古橋万由子のサイコメトリーや近未来を幻視する能力だったり、臨死体験や幽体離脱などいわゆるオカルティックな内容が色々盛り込まれている。
ナイル川に対するピラミッドの配置が天の川に対するオリオン座を模しているという仮説や母親が出産の際に子供の苦痛を和らげるために分泌するホルモンが前世の記憶を消し去る作用がある、等々、オカルト雑誌「ムー」の記事のようなエピソードが語られ、またそれらは私も好きなものだから久々に楽しんだ。

そんな世にも奇妙なエピソードに彩られた物語は最後になって実はオカルトではなくミステリであると判明する。

色んなことが論理的に解明されるが、それでもファンタジーの要素が全くないわけではない。特に恩田氏は人それぞれが持つ特殊な能力についてはそのままとしている。

古橋万由子が高槻倫子と同じく他者の忘れ物を映像的に「観て」云い充てる能力や高槻秒の人の気持ちに同化して感情を読み取る能力だったり、高槻倫子の友人であった十和田景子の過去を見る能力もあった。
それらはミステリであっても人の持つ不思議は解き明かせない、寧ろだからこそ人は面白いというのが恩田氏の創作姿勢ではないだろうか。作中で十和田景子が呟くように「世の中には色々な人がいる」というのが恩田氏のスタンスなのだろう。

そういう意味では本書で最も最たる特徴を持つのは高槻倫子という美しい夭折した画家に尽きるのではないか。

本書は上述のように恩田作品としては3作目にあたり、デビュー作の『六番目の小夜子』、2作目の『球形の季節』がそれぞれ学園ホラーと地方都市ファンタジーと続いたことから本書も扱うテーマが生まれ変わりということでてっきりオカルト、もしくはその設定を前提にした高槻倫子殺人の犯人捜しのミステリだと思われたが、古橋万由子の生まれ変わりという設定さえも論理的に解明される。つまり自身のそれまでの発表作まで本書においてトリックに寄与しているのだ。
本書を以て恩田氏が作品ごとにジャンルを変える作家であることがさらに強調された。ホラーやファンタジーと云った超常現象のみを扱う作家ではなく、ミステリも書けるのだと。

今なお旺盛な創作力で既成概念に囚われない自由な作風と設定の作品を次々と生み出している恩田氏のダイバーシティを認知させる意味でも、案外知られていないが本書の位置付けは重要な作品であると云えるだろう。

No.4 7点 斎藤警部
(2019/03/08 18:12登録)
特殊設定と思われた要素の大半が最後にはドタつきながらもギリ合理解明される過去掘削サスペンス。。と思っていたら!! 悲劇の物陰から現れる大きなピースがごとりと嵌まって、無理筋押しの固さが解きほぐされる、ほんの数頁。 筆致が明る過ぎると読中感じていたけれど、それも巧妙なバランス取りの一翼だった。 “あの人”がこんなチョイ役で終わるわけないよな。。とさり気なく光らせておいての二重落としにやられる。

No.3 5点 桜ノ宮
(2007/09/30 01:00登録)
ちょっと先が読めてしまう。
しかし、最後がとても良かった。
恩田作品の中では、終わり方がかなり良いと思う。

No.2 6点 綾香
(2004/09/20 23:15登録)
私は恩田作品のなかでは一風変わっている作品だと思います。「記憶を辿る」という点はなかなか楽しかったです。ただ、終わり方がすっきりしないのが…。

No.1 6点 じゃすう
(2003/04/04 21:14登録)
恩田作品初体験と言うことで、先入観のないこの作品を選びました。内容は、幻視という設定を持つ人が主人公でサイキック探偵ものでしたが、プロットがしっかりまとまっていて面白かったです。ミステリとしての主な謎も解明されますし。しかしラストは、タイトルどおりに、あまり後味のすっきりしないダークな終わりかたで好みが分かれるかもしれません。私はアリだと思います。
関係ないですが、北森鴻さんの『闇色のソプラノ』っぽいかも……。

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