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ミステリの祭典

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殺してしまえば判らない
女装探偵・狐久保朝志

作家 射逆裕二
出版日2006年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2024/01/23 22:33登録)
首藤彪三十四歳、現在無職。妻の彩理は、東伊豆の自宅の書斎出入口で血まみれとなって死んでいた。確たる物証もないまま、妻は自殺として処理される。彪は失意のあまり東伊豆を離れるが、彩理の死の真相を究明するために再びそこで暮らす決意をする。だが、引っ越してきた直後、周囲で発生する陰惨な事件やトラブルに巻き込まれてしまう。その渦中で知り合いとなってしまった奇妙な女装マニアの中年男・狐久保朝志。外見に似合わず頭脳明晰、観察力抜群な彼の活躍で、彪の周囲で起こる事件は次々と解決していき、さらには妻の死の真相まで知ることとなるのだが…。予測不能な展開と軽妙な文体、そしてアクの強い探偵の鮮やかすぎる推理で、読者を超絶&挑発の迷宮へと誘う本格ミステリ。斯界を震撼させる女装探偵・狐久保朝志初登場。横溝正史ミステリ大賞作家が放つ超絶&挑発しまくりの本格迷宮推理。
『BOOK』データベースより。

取り敢えず、人間が描けていません。主要な三人も登場頻度の割にはやはり描けていません。もう少し個性を感じさせてくれないと、感情移入出来ませんね。その他の人物に至っては、誰がどんな役割を担っているのかさっぱり伝わってきません。読んでも読んでもそれが私には判りませんでした。
本筋以外の全く関係ない事件を持ち込んでみても、それはそれで完結している訳で、おまけ程度にしか感じられません。

では何故6点付けているのか。ケチばかり付けましたが、真相が明かされる最終盤に至って、これが又見違えた様に凄みを見せ付け、衝撃を読者に与えます。ここを最大限に評価してこの点数に。意外というか奇想というか、思ってもみなかったカタルシスを齎してくれました。そしてダラダラ読んでいたせいもあって、思いの外そこここに伏線が張られていたのにも驚かされました。

No.1 5点
(2011/07/06 21:25登録)
解決の意外性を重視した、軽いタッチのモジュラー型パズラー(!?)。3つの事件(その1つに関連した自殺も入れれば4つ)が起こりますが、それぞれは独立して解決してしまいます。1つはニュースの中で語られるだけの事件です。それぞれがWho、Why、Howを中心の謎にしているあたりを見ても、なかなか凝ったことを考える作家ではあるようです。モジュラー企画が成功しているかどうかは別問題ですが。
3つのうち中心となるのは、1年前に起こった語り手の妻の死で、バカミスっぽい(あくまで「っぽい」程度)密室トリックが最後、犯人指摘の翌日になって明かされます。まあ、こういう偶然の使い方は嫌いではありません。しかし語り手が、部屋の何かが変わっているように感じた、という点に対する答は、肩すかしでした。
結局本作で一番気に入ったのは探偵役のキャラクターで、嫌う人もいるかもしれませんが、なかなかユニークです。

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