毒杯の囀り 修道士アセルスタンシリーズ |
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作家 | ポール・ドハティ |
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出版日 | 2006年09月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | E-BANKER | |
(2017/03/04 15:40登録) 1991年発表の「アセルスタン修道士」シリーズの第一作。 作者はエリス・ピーターズ、リンゼイ・デービスと並び称される英国の歴史ミステリー作家で、本作は投書P.ハーディング名義で発表されたもの。 原題“The Nightingale Gallery”(意味は後述) ~1377年のロンドン。老王エドワード三世の崩御と幼いリチャード二世の即位により、政情に不穏な気配が漂うさなか、王侯相手の金貸しを営む貿易商が自室で毒殺される。男の部屋の外は人が通れば必ず“歌う”、通称<小夜鳴鳥の廊下>。家族の証言によれば執事以外に廊下を歩いた者はいない。屋根裏で縊死していた執事が犯人でなければ事件は不可能犯罪になる。この難題に挑むのは、酒好きで陽気なクラストン検死官と書記のアセルタン修道士。中世英国を舞台にした謎解きシリーズの開幕!~ 舞台こそ中世英国とやや特殊ですが、作品自体は割とオーソドックスな英国本格ミステリー・・・でしょう。 世界観こそ醸し出していますが、「中世英国」自体がトリック等に深く関わっているわけではありません。 ミステリーとしての「肝」はフーダニットのほかに、紹介文にある不可能状況=いわゆる「準密室」ということになります。 第三者の「目」ではなく、「耳」により構成された密室(誰かが通れば大きい音がして必ず気付くという状況)というのがやや目新しいといえば目新しいです。 (※原題のナイチンゲール・ギャラリーというのがこの廊下の名前です) この解法自体は全然突飛なものではなく、これまた実にオーソドックスなもの。 まるで教科書のような密室トリックなのです。 探偵役のアセルスタンが最終章でこのトリックを看破するのですが、伏線は序盤から丁寧に張られていて、さすがに本格ミステリーの本場という感じがします。 探偵役のコンビ(クラストン&アセルスタン)もいいバランスで、シリーズ第一作としては充分な水準といっていいでしょう。 難を言えば、特徴が薄いかなあというところ。 山場があまりないので、サスペンス感とかハラハラ感を味わいたい方にとっては物足りないかもしれません。 それと、本筋に関係ない当時の英国の市井場面なども多く書かれているので、この辺の水増し感は結構感じてしまいました。 でもまぁ、楽しめるレベルにはある作品という評価で良いでしょう。これなら続編を手に取るかもしれません。 (中世英国舞台ということで、文体もいつもより丁寧且つ高貴?にしてみました・・・爆) |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2015/01/26 18:23登録) (ネタバレなしです) ドハティがポール・ハーディング名義で1991年に発表した修道士アセルスタンシリーズの第1作の本格派推理小説で14世紀後半の英国が舞台です。同時期にマイクル・クラインズ名義でロジャー・シャーロットシリーズの第1作「白薔薇と鎖」も発表していますがあちらが冒険小説要素がかなり強いのに対して、本書は剣での切り合い場面もありますがストレートな本格派推理小説に仕上がっています。主人公のアセルスタンもロジャー・シャーロットに比べると普通人的なキャラクターで、ドハティー入門としてはこちらのシリーズがお勧めです。不可能犯罪を扱っていますがそれほどその謎を強調せず、自殺か他殺かの検証や死者が生前に残したメッセージなど色々な謎をバランスよく提示したプロットになっています。 |