home

ミステリの祭典

login
そして物語のおわりに

作家 小松立人
出版日2026年03月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 6点 kanamori
(2026/07/21 11:38登録)
医大生の張田はバイト先の店長に誘われ、友人の久郷と共に離島に立つ店長の父親で大手ゼネコンの会長・柏谷が隠遁する屋敷を訪れる。親族や知人が集まるなか柏谷が余命が幾ばくもないと明かされた翌朝、四肢を切断され池に浮かんだ彼の死体が発見される。さらに柏谷の部下も同様に惨殺されていた。屋敷中の通信設備が破壊され、船も2日後まではやってこない。警察と鑑識が介入出来ない状況下、張田は医学的知識を活かしたある提案をする…………。

鮎川哲也賞最優秀賞受賞のデビュー作である特殊設定ものの前作とは打って変わって、今作は孤島もの+猟奇殺人の王道のフーダニット・パズラーになっています。とくに最近は孤島ミステリが次々と出版されている感じがあって、それらとどういった点で差別化されているかの興味で読んで見ました。
まずホワイダニット面では、なぜ容疑者が限定されてしまう状況下で犯行を行うのか、死期が近い人物をわざわざ殺す理由は?、時間と労力をかけて死体を切断するのはなぜか?の三点はある程度納得がいくものです。で、ある事実を犯人が知ることでスイッチが入るという経緯は、ある古典ミステリを連想させます。ただ、ある程度用意がされていたとはいえ、こんな手間が掛かる複雑な工作を短時間で考えつくものなのかという疑問はありますね。ほとんど事件の解明に関心がなさそうだった久郷の探偵する動機が独特で、解決編前の”ワトソン役の張田には意味が不明な探偵の行動”いわゆる「名探偵しぐさ」や、コロンボの「二枚のドガの絵」のバリエーションとも言える意外な証拠など、内外の古典ミステリの趣向を忠実になぞるオマージュ的な要素も楽しい。

No.2 7点 メルカトル
(2026/06/01 22:14登録)
医学生・張田雅之は、アルバイト先の店長の招きで、友人の久郷一と共にとある離島を訪れる。店長の父・柏谷高視は大手ゼネコンの会長でもあり、自身が所有するこの島で、親類や知人を招いて年末を過ごすのを習慣にしていた。集まった人々の前で高視が病気で余命幾ばくもないと明かされた翌朝、彼は四肢を切断され、池に浮かべられた死体となって発見される。高視の部下の男も同様に惨殺されていた。屋敷内のすべての通信設備は壊され、船も二日後まではやって来ない。出入り不能の孤島と化した中、猟奇的な事件を調べるために、張田は医学生としての知識を活かしたある提案をする──。『そして誰もいなくなるのか』でセンセーショナルなデビューを飾った著者による、第二長編。
Amazon内容紹介より。

特殊設定ではない、どこまでも真っ直ぐな孤島ミステリ。探偵と助手が目立ちすぎて、他の登場人物に個性が感じられません。奇矯な探偵というのはありがちな存在ですが、久郷一の場合特殊能力を持っていてそれを遺憾なく発揮しています。そこが他の本格ミステリと一線を画すところでしょうか。医学生の張田雅之は結構な観察力があり、これまた普通の探偵助手とは一味違います。彼のダミーとなる推理はなかなかのもので、こちらの方が真相よりも面白かったりします。

また四肢の無い死体の切断の理由は、私の知る限りでは初めてかも知れません。クローズドサークルだからか首なし死体という訳ではありません、登場人物が限られていますからね。一方密室トリックは前例があり、驚きはありませんでした。しかし王道の本格ミステリであるのは間違いなく、個人的に好感が持てました。探偵の相当の変人ぶりにも免疫があるせいか、それほど違和感を覚えることなく読めました。嫌いなタイプではないですし。

No.1 7点 虫暮部
(2026/05/25 13:33登録)
 孤島の屋敷でクローズド・サークル。しかし、キャラクター設定しかり猟奇的事項しかり、定型から外そうとする意図は窺えるし、それなりに成功している。死亡推定時刻に関する論旨が面白い。読後に残った歪な印象が個性的な一冊。

3レコード表示中です 書評