home

ミステリの祭典

login
天女の密室
嶋成シリーズ

作家 荒巻義雄
出版日1977年11月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 文生
(2025/04/12 09:44登録)
古文書や浦島太郎伝説を絡めた伝奇小説的な道具立てはそそりますし、そこに密室殺人を重ねることで事件の不可思議性が強調されていくのもスリリング。密室トリック自体もなかなかユニークで悪くありません。なのにあまり面白くない。どうも事件解明に向けてのハッタリが不足しており、謎解きがそっけなさすぎてカタルシスに欠ける印象です。非常に惜しい作品。

No.1 5点
(2013/10/21 22:49登録)
荒巻義雄は初期の幻想的なSF『神聖代』を読んだことがあるだけで、80年台後半からの架空戦記シリーズには興味を持てず、といったところでした。本作は「伝奇推理小説」と銘打たれていますが、浦島伝説をアナロジー的に使っているとはいえ、伝説が現実と混ざり合うわけではなく、純粋なミステリです。美術に詳しい作者らしく、本作の主人公は画家で、画商や美術のパトロン的存在など、なかなか説得力があります。
2つの密室トリックとその関係には面白い発想があるのですが、事件解明部分の書き方がさりげなさ過ぎて、印象が薄くなっているのが惜しいと思いました。
途中でディクスンの『誰が蛇を殺したか』なんていう作品について登場人物たちが論じているのですが、これは『爬虫類館の殺人』で、原題直訳は「彼がペイシェンス(蛇の名前)を殺すはずがない」。読んだのは初版なので、後の版では修正されているのでしょうか。

2レコード表示中です 書評