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ミステリの祭典

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ビブリア古書堂の事件手帖V ~扉子と謎めく夏~
ビブリア古書堂の事件手帖・扉子編

作家 三上延
出版日2026年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2026/08/18 13:28登録)
栞子と大輔が海外在住のコレクターの本の買取りで不在の夏休み、両親に代わって古書堂を任された県立高校2年生の篠川扉子は、期間限定のアルバイトで高校の後輩・恭一郎と共に留守を守る事になるのだが………。黒いフレームの眼鏡を外せば美人の母親に似た顔立ちで、好奇心と洞察力も母親譲り。だが異なるのは何事にも物怖じしないその性格。お客の特殊な「相談」に首を突っ込まないよう、密かに扉子の監視役にと恭一郎を雇った栞子の思いを他所に、扉子は持ち込まれた古書にまつわる謎を次々と解き明かしていく。

ビブリア古書堂のひとり娘・扉子をメインにした新シリーズとしては5作目で3話を収録。正直なところ新シリーズの方はそれほど熱心に読んでいなかったので、アルバイトの恭一郎が前々作からの再登場ということも途中まで気付きませんでした。シリーズ通算では12作目になる本作は、扉子が店に居るところにアルバイトの男子が登場するシーンで、ああ、これはシリーズ第1作のオープニングで、アルバイト五浦大輔の初登場の場面の再現では、と感じました。

1話目のお題は「シャーロック・ホームズの帰還」(岩波文庫、昭和13年初版)
戦時中、南方の戦地で言葉が通じないはずの日本兵捕虜とイギリス軍将校との、ホームズ譚を介した不可解なコミニケーションのハウダニットと文庫の落書きの秘密。まあ「帰還」と言えばアレでしょう。
2話目の「森山大道「写真よ、さようなら」」は、文香叔母さん(栞子の妹)の持ち込みネタで、昭和47年初版のプロの写真集を巡って、復刻版、署名版、贋作などと、関係する男女の思いが錯綜する話で、複雑だけどミステリとしてはなかなか面白かった。
最後は「中原中也「山羊の歌」」がお題で、以前に宮沢賢治「春と修羅」の事件に出てきた初版コレクター・玉岡昴とお久し振りのアノ人物が登場し、今後の不穏な展開を匂わせて終わります。

No.1 7点 HORNET
(2026/06/17 22:39登録)
 その夏、不在中の両親に代わり、ビブリア古書堂を任された少女。美しい女店主とよく似た顔立ちで、本への好奇心と洞察力も母親譲り。だが異なるのは表情豊かで物怖じしないその性格。特殊な依頼に首を突っ込まぬよう少女の監視役を任された少年は、持ち込まれた古書に秘められた謎を、少女が鮮やかに解き明かしていく姿を目の当たりにする。戦時中ある男を救った『シャーロック・ホームズの饋還』と、残されたいたずら書き。
 真夏の鎌倉を駆ける「探偵と助手」の物語が始まる――。
(KADOKAWA書籍紹介より)

 作者の「あとがき」に書かれていたが、本シリーズも第1巻が刊行されて15年。時のたつのは(歳を取るのは)早いものだ…
 シリーズ開始当初、世間で話題になった本作だが、その熱も過ぎ去り、今も続いていることを知る人のほうが少ないかも、という現在。だがそんな世間の人気の起伏に全く惑わされることなく、粛々と書き続ける作者の姿勢(勝手な推測だが)がよい。変に「前作を越えなければ」とか「もう一度世間を振り向かせたい」とかいった気負いがない(勝手な推測だが)カンジが、安定のクオリティを保ち続けている気がする。


 今回は3話のエピソード(事件)。込み入ってはいたがミステリ的にかなりよかったのは2話目「森山大道 『写真よさようなら』」かな。(どれが本物でどれが復刻版なのか、ややこしいきらいはあったものの…)3話目も、疑われていた娘の見方が反転する件は面白かった。
 まだまだシリーズは続くとのこと。楽しみだ。

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