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ミステリの祭典

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第四の郵便配達夫
マローンシリーズ/別邦題『第四の郵便屋』

作家 クレイグ・ライス
出版日1950年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 弾十六
(2019/05/01 13:59登録)
ほぼ確実に持ってるな…と思いながら古本屋で見つけて思わず購入。快調に読了。創元文庫1988年版で読みました。
何か居心地が良いライス世界、でもそーゆーのって実世界に違和感のある人の世界じゃないか、とも思うわけです。
ところで本作を読んでて感じたのですが、これって1940年代の世界というより1920年代風味(つまりノスタルジア系)なのでは? だから懐かしさすら感じる世界観になってるのでしょうね。(O. ヘンリー的な人情話風でもあります)
ミステリ的には推理というより意外な事実を直感的に探偵が思いついて展開して行くタイプの小説。なので論理好きには物足りないでしょうね。
以下、トリヴィア。
p8 陽気な朝の口笛… ローズマリー(the cheerful, mid-morning whistle “Rose-Marie—I love you—”): 映画にもなった有名ミュージカルRose-Marie(初演1924) 1936年の映画でこの曲を歌うシーンはYouTubeでも見られます。
p10 強請りにからむ殺人と少女の幽霊の件(those racket murders and the girl ghost): 原文には「The Lucky Stiff」と注釈あり。
p12 五ドル札(five-dollar bill): 表がリンカーンで裏がリンカーン記念堂のやつですね。サイズは156x66mm。この基本デザイン及びサイズは1929年以降1999年まで変わって無いようです。(今でも表リンカーン、裏記念堂というのは同じ。デザインが現代的になってます) 消費者物価指数基準1948/2019で10.55倍、5ドルの現在価値は5874円。
p64 ジンガリーのゲイ ナーニ(Gay Gnani of Gingalee): 芸なーに?というシャレかと一瞬思いました。The gay gnani of Gingalee: or, Discords of devolution; a tragical entanglement of modern mysticism and modern science (1908) Florence Chance Huntley著の小説? ちょっとお試し版を読んでみたけど何やらサッパリ。シカゴが舞台?
p68 ビア ハウンド(a beer hound): ネットでちょっと調べましたが、実在してないみたい。残念。
p86 五、五十度もある!(You have a temperature of 122!): 訳者が華氏を摂氏に変換してくれてます。高体温の最高記録は1980年米国男性の46.5℃らしい。次の「四十二度二分」の原文は「108」原文はもっと冷静なセリフの感じ。
p92 ココア・バター(cocoa butter): 保湿効果で肌に良いらしいけど… 単なるネタか民間療法?
p168 キャッパー&キャッパーのコート(the coat of his Capper & Capper suit): ここでの「コート」は背広のジャケット(上着)の意味ですね。日本語で「コート」と言えばオーバーコートの意味になっちゃうと思います。キャッパー&キャッパーはネット検索では見当たりませんでした。
p192 一八九三年の万国博覧会: シカゴ開催。
p192 ハーク ザ ヘラルド エンジェルズ シング(Hark! the Herald Angels Sing): クリスマスの賛美歌「天には栄え」チャールズ・ウェスレー作詞、メンデルスゾーン作曲。
p206 テイノパルプス・インペリアリス(Teinopalpus imperialis): テングアゲハ
p260 “アメリカン ウィークリー”のトップ記事になるような(that would get top billing in the American Weekly.): ハースト系の週刊誌(1896-1966) 初めて知りましたがカヴァーが美麗イラストの雑誌です。内容はscantily clad showgirls and tales of murder and suspense...

No.1 5点 kanamori
(2013/02/01 12:00登録)
高級住宅街の同じ路地で三人の郵便配達人が相次いで殺される。逮捕されたのは、タイタニック号で死んだ恋人からの手紙を30年以上待ち続けている近くに住む大金持ちの老人で、この事件に弁護士マローンが関わることになるが・・・、というシリーズの第9長編です。

フォン・フラナガン警部の転職話ネタやら、ヘレン&ジェイクのジャスタス夫妻が絡んで事件をかき回すという、まあシリーズのお約束どおりの展開ですが、今回はマローンが現場近くで拾って連れまわす野良犬が笑いのツボかな。もてあまして困るパターンとは逆で、行く先々で「譲ってくれないか」と声をかけられるのがなんとも可笑しい。
ミステリ的に驚くような仕掛けはないけれど、犯人の動機にやはりライスらしさを感じる作品です。

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