home

ミステリの祭典

login
ハレー彗星の館の殺人

作家 ロス・モンゴメリ
出版日2026年02月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2026/06/04 11:28登録)
1910年の英国。75年ぶりにハレー彗星が地球に最接近しているニュースが流れている最中、少年院帰りの前科者「ぼく」スティーブンは、謎の手紙に導かれて、英国南西端コーンウォール地方の孤島に建つタイズ館で従僕として仕えることになった。
当主の子爵コンラッドは、彗星による有毒ガスなどのデマ的な被害予測をまともに信じ、屋敷中の扉や窓を密閉させ、さらにスティーブンには嫌われ者の老令嬢”大叔母”ことデシマの世話を任せる。そして、彗星が到達するその夜が明けて、密封された書斎で顔面にクロスボウの矢が刺さった子爵の死体が発見される。

満潮時には本土から切り離されるクローズド・サークルなお屋敷で起きる密室殺人、腹に一物を抱える男女三人の一族親族、怪しげなドイツ人科学者、広大な領地にある迷路などなど、黄金時代の”クラシック・ミステリあるある”な設定とギミックを全部盛りしたような愉しい作品です。
探偵役の車椅子の老嬢デシマと、その手足となって動くスティーブンと探偵小説好きの若いメイド・テンペラスの探偵トリオも注目です。証拠や証言の収集方法にはやや疑問が有りますが、解決編に入る直前の(水力発電機の停止工作による)暗闇の中のサスペンス溢れる展開と轟く雷鳴など雰囲気作りはなかなかです。
作者は児童向け小説の書き手でもあったからか、ライトで読みやすい文章はリーダビリティがあります。

No.1 6点 nukkam
(2026/03/16 21:59登録)
(ネタバレなしです) 2013年にデビューした英国の児童小説家ロス・モンゴメリが2026年に発表した初の大人読者向け作品が本書です。角川文庫版の巻末解説で本書の魅力を時代背景、舞台設定、人物造形、そして謎解きと紹介している通りの本格派推理小説です。作中時代は1910年で、ハレー彗星が地球に近づき彗星の毒ガスで人類が滅亡するという迷信を信じる貴族が生き延びるために扉や窓を密閉工事させた館を舞台にして密室殺人事件が起こります。主人公2人も個性的です。1人は79歳の高齢で車椅子生活者ながら科学の知見があり毒舌家の貴族のミス・デシマ・ストッキンガム、もう1人が少年院出身でデシマの従僕になる語り手のスティーブン・パイクです。さまざまな制約を抱えながらのアマチュア探偵コンビぶりは読みごたえたっぷりで、終盤のサスペンスもなかなかの出来栄えです。動機についてはやや後出し気味の説明に感じましたが「英米黄金期探偵小説の香り」を漂わせることに成功した作品だと思います。

2レコード表示中です 書評