| ハリー・ポッターと死の秘宝 ハリー・ポッター |
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| 作家 | J・K・ローリング |
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| 出版日 | 不明 |
| 平均点 | 9.50点 |
| 書評数 | 2人 |
| No.2 | 10点 | Tetchy | |
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(2025/12/01 00:53登録) 今までの巻に出てきた全てのキャラクターがその行く末を示されるが如く総出演する。前作の最後で6つの分霊箱探しという命題が突きつけられたハリー。私は第6巻を読んだ時に、これは上中下巻に成るに違いないと思ったが、そうではなかった。しかし上下巻合わせて1,000ページを越す分量はかなり中身が濃いものだった。 特に上巻はなかなか物語が進まず、やきもきした。 最終巻にいたってドンドン出てくる謎また謎、そして危難。本巻は今までと違い、ハリーとロンとハーマイオニーは学校に行かずに分霊箱探しに出ているので学校生活が全く語られない事も特徴的だ。 そしてずっと彼ら3人はヴォルデモートとその下僕である死喰い人らの追跡の影に怯えつつ、心の拠り所であったダンブルドアへの信頼がぐらつき、そして仲間割れした末に離別してしまったりする。とにかく暗いトーンでずっと物語が進む。 そしてヴォルデモートが復活し、虐殺の日々が訪れる。暗黒支配の到来はかつての西洋の歴史の汚点である魔女狩りのような不安と恐怖の様相を晒し、それが物語を重く包みこむ。 さらにハリーは杖も失うという事態に陥り、更に彼らの状況は悪化する。 前巻の感想でも書いたが、これはさながら『スターウォーズ』シリーズのような展開である。 話は変わるが、私が感心したのは作者が決して予定調和に堕していない事。 ハリーの目の敵であったドラコとゴイル、クラッブ一味は最後まで敵であった。日本のマンガでは「昨日の敵は今日の友」とばかりに宿敵として現れた敵役が次のシリーズでは頼もしい味方になっていることがよくあるが、現実の人間関係なんてそんな都合のいいものではなく、反りの合わない者とはなかなか分かり合えないものだ。 そして全てはヴォルデモートとハリーとの最終決戦に雪崩れ込んでいく。 本作でキーとなるのは杖である。 魔法使いが魔法を発動するために必要不可欠な道具、杖。本作ではこの杖に関する法則が最後に至ってものすごい効力を発揮する。それは魔法使いの杖とは杖が持ち主を選ぶという1巻から云われている基本原則だ。この命題に従って繰り広げられる杖の変遷、そして特に最後に至って判明するロジックは実に素晴らしい。 この真偽は1巻から6巻まで振り返る必要はあるが、確かにその通りだったと記憶している。私はあっ!と唸ってしまった。 さて忘れてならないのは本書が児童書であるという事だ。 ハリーはこの後、伝説の魔法使いとして語られる事だろう。しかし読者は知っている。彼の伝説がその伝えられるようには決して雄々しい物ではなかった事を。 最後に気付くのはこれはスネイプの物語でもあったということ。 映画『マトリックス』がネオの成長を描きながら、宿命のライバル、エージェント・スミスの物語でもあったように、ハリーとスネイプは表裏一体の主人公だったと云える。 そして私が予てから予想していた、最終巻にして全ての価値観がひっくり返る驚きは半ば当り、半ば外れていたと云えよう。 それはやはりスネイプとダンブルドア、2人の人物についてだ。ハリーの守護者でありながら、その実、ハリーをヴォルデモート消滅のための生贄の山羊として育てていたダンブルドア。憎き父親への恨みを晴らすがごとく、常に辛くハリーに当っていたスネイプのハリーに対する保護。最後で明かされるのはスネイプの純粋なまでの愛の献身だ。彼はずっとハリーの緑色の瞳に憧れの君を見ていたのだ。それが死の間際にハリーにかける「僕を・・・・・・見て・・・・・・くれ・・・・・・」の台詞で解る。私はこのスネイプの愛の献身こそヴォルデモートの最大の誤算だったと思っている。 そして最後の一行は一番作者が書きたかった文だっただろう。シンプルゆえに、妙に心に響いた。 |
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| No.1 | 9点 | クリスティ再読 | |
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(2025/11/29 11:35登録) さてハリポタの大団円となる7冊目。よくもまあ、ここまで書いたものだ。もちろん「ホグワーツの戦い」の最終決戦であり、今まで登場したキャラもここかしこに顔を見せる同窓会効果もあり。コリンくんの戦死とか胸が痛いなあ。 だからローリング女史、クールにキャラを殺していくよ。非情と言ってもいいくらい。最初のヤマの「七人のポッター作戦」ではハリーのふくろうでお馴染みヘドウィグが流れ弾で死んだりしてヒヤっとする。まあ別な重要人物もここで戦死するけども、確かに全体の展開を考えたときに、意味がない(ふくろう)、動かしづらいなど小説上の役割を終えているのが確かなんだ。 そしてビルとフラーの結婚式が暗転して一気に状況は不穏に。三人組は逃亡を通じて分霊箱の探索と破壊の任務に。ハリポタシリーズ後半に特徴的なんだけども、上巻に動きが少ないんだよね。その分上巻で丁寧に伏線を張っていることにもなる。下巻の中盤にようやく三人組はホグワーツに到着。そこから怒涛の伏線回収で、シリーズ全体の最大の伏線である、ダンブルドアの意図とスネイプに託した意味が明らかになっていく。ここらへんにミステリ的な興味があることになる。 だから最終巻まで読むと、ダンブルドアとスネイプの印象が百八十度変わるくらいのものなんだよね。日本のスネイプ人気もわかる(いや...評者はそこまで好きじゃない)。ある意味、主要キャラには完全な善人って誰もいないわけでもある。冒頭あたりでハリーがルーピンを辱めてたりするあたりは、反発も感じるし。それでも登場人物の間での家族的な愛情の強調がとりあえずジュブナイルの枠にシリーズをとどめているというべきだろうか。 結局のところハリーとヴォルデモートの共通性というのが、実は全体のキーみたいなものだったりするわけでもある。だから最後の19年後の描写で、ハリーの息子アルバスが「もしスリザリンに組み分けされたら?」と危惧する話というのは、まさにシリーズ冒頭のハリーの危惧でもあったわけである。そういう「危うさ」をうまくコントロールした話でもあるのだろう。いやダンブルドアも過去を覗けばそういう自分の危うさに足をすくわれ続けたわけなんだしなあ。 というわけでハリポタ完結。評者的にもいろいろと思い出深いシリーズだったりするよ。ローリング女史のキャンセルも終結したわけであり、ローリング女史が示した「勇気」がすでにハリポタで示されていたことが、なかなかに感慨深い。 |
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