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ミステリの祭典

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国会採決を告げる電鈴

作家 エレン・ウィルキンソン
出版日2025年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2025/11/13 22:05登録)
(ネタバレなしです) 英国のエレン・ウィルキンソン(1891-1947)は政治家で、アトリー内閣(1945-1951)の時代には教育大臣を務め(在任中に死去)、彼女の名前を冠した女学校がロンドンに設立されています。本書の論創海外ミステリ版が出版された時点での国内Wikipediaには政治活動しか紹介されていませんが小説2作(1作は非ミステリー)、ノンフィクション系を数作(共著もあり)書いたようです。本書については国会議員時代に書かれたように表紙で紹介されていますが、厳密には1931年の選挙で落選して1935年の選挙で再選されるまでの間の1932年に発表された本格派推理小説です。ビッグ・ベンの鐘の音と国会採決を告げる電鈴の響き、そして銃声が重なり内務大臣との会食を終えた直後の米国の富豪の死体が発見されます。舞台が国会議事堂ということでスタンリー・ハイランドの「国会議事堂の死体」(1958年)と読み比べたい読者もいるかもしれません。ハイランドよりは読みやすいものの手探り感の強い捜査が続く展開はいささか焦点が定まっておらず、手掛かりが後出しの解決は唐突ですっきりできませんでした。政治家のミステリー作品という希少性は認めますが本格派としての完成度は高くないように思います。

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