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ミステリの祭典

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町内会死者蘇生事件

作家 五条紀夫
出版日2025年05月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2025/09/02 22:08登録)
この町には、死者を蘇生させる秘術があるんだよ――。生まれも育ちもここ信津(しなづ)町の、健康(たけやす)・昇太・由佳里は、町を支配する信津寺の住職で、悪辣非道な町内会長の権造を殺害することを決意する。酒に酔わせて風呂に沈めて、大成功! のはずだったのに……。なぜか翌朝、ラジオ体操にピンピン元気な権造が。「誰だよ! せっかく殺したクソジジイを勝手に生き返らせたのは!?」殺人犯が蘇生犯を追う、痛快なユーモアメタミステリーの超傑作、爆誕。
Amazon内容紹介より。

まずこれは死者蘇生術ありきの作品なので、そこを踏まえた上で読まないとなんだか損をした気分になりますので注意してください。それは厳然たる事実なので、トリックとかはありません。じゃあ、何を指標として読めば良いのか?判りませんでした、ギリギリまで。途中ドタバタ劇を見せられているようで、あまり好みではないなと思いながら漫然と読んでいました。

要するに権造をいかにして殺すかが命題となっており、そこを中心に読み進めるしかない様に思わせておいて実は・・・という展開で、アッと驚きの結末が待っています。それは流石に読めなかったなあという心地よいカタルシスを得られます。ここだけなら8点相当だったと思いますが、それまでがややダルかったので控えめにこの点数にしました。まあ7点に近い6点という事でご勘弁願いたい。伏線は一応張られており、まさかの着地点にも納得出来ました。

No.1 6点 人並由真
(2025/08/05 08:56登録)
(ネタバレなし)
 秩父の一角にある「信津(しなづ)町」。それぞれが地主の息子や娘だが庶民的な暮らしの24歳の三人の男女「ジヌシーズ」は、土地の権力者である70歳台の住職で町内会長の長谷部権造をさる理由から謀殺した。だが信津町にはある一定の法則性と条件のもとに死者を蘇生させる秘伝のオカルトシステムがあり、その秘術によって権造は復活した。謎の人物「蘇生犯」の意志が介在していることを察したジヌシーズは当該の人物を探しながら、一方で次の行動に出るが。

 特殊設定ミステリでフーダニットパズラーの要素は確かにあるものの、むしろ最後に明らかになる<ある真実>の方でインパクトを受ける作品。部分的に予想がつくところはあったものの、一番のサプライズはああ、そうきたか、という感じであった。
 全体的にはっちゃけながら、同時に常に作者の方に読み手の手綱を握られているような緊張感があり、その辺のテンションにシンクロできれば面白い、というか楽しめるだろう。

 評者は途中で、作者に鼻面掴まれて引き回されるのにやや疲労感を覚え、このまま最後まで行くのなら評点は5点でもいいか、と一瞬思ったが、前述の終盤のどんでん返しで眠気がふっとんだ。
 クロージングにはいろいろ感じる人もいるだろうが、これはこれで良かったのでは、とは思う。
 この評点の上の方で。

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