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ミステリの祭典

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乱歩と千畝:RAMPOとSEMPO

作家 青柳碧人
出版日2025年05月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 HORNET
(2025/08/31 19:52登録)
 日本探偵小説の父・江戸川乱歩と、「命のビザ」で歴史的偉人となった杉原千畝。実は2人は、旧制愛知五中(現・瑞陵高校)を卒業し、早稲田大学に進学した同窓生。もし2人が、学生時代に出会い友人となっていたら――。そんな斬新で大胆な発想で描かれた、フィクションの歴史小説。

 実際の2人がどうであったかは置いといて、作中で描かれる2人の人物造形が面白い。ミステリ愛は人一倍、頭もよいが社会不適合な優柔不断男、乱歩。実直で使命感が強く、かつ人への慈愛に満ちている青年、千畝。若い二人が偶然に出会い、それぞれ数奇な運命に身を投じながら、要所要所で邂逅し、互いに影響し合っていく。よくこんな面白いストーリーを考えたものだと感心しながら、その魅力にぐいぐい読み進めてしまう。広田弘毅、松岡洋右、川島芳子といった戦時中の日本史、正史、清張、風太郎などの戦後ミステリ史をそれぞれ牽引したメンバーの登場も興趣を高め、あの「命のビザ」の場面は胸が熱くなる展開だった。
 ミステリではないことを差し引いても、高評価を付けたい一作。

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