ゾンビがいた季節 |
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作家 | 須藤古都離 |
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出版日 | 2025年04月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | 人並由真 | |
(2025/07/13 18:12登録) (ネタバレなし) 1969年。ネバダ州にある人口50人弱の小さな町ジェスロー。都市部の出版エージェント、ダン・ウェイクマンの勧めで執筆した通俗スリラー「悪人」シリーズがヒットして映画化もされた作家トム・オーショネシーはその町の一角に住むが、自作のヒットの収入をギャンブルにつぎ込む。一方で当人的には意に沿わない作品が当たったトムは、執筆のモチベーションを著しく減退させていた。そんななか、ウェイクマンのエージェント業事務所から、女性職員のケイティがトムのもとに来訪。一方、トムの視界の外では、とある計画が進んでいた。 帯にあるあらすじのネタバレの件ですが、第一章の見出しで底割れ(暗示)してるので、別にいいのでは、と。少なくとも自分は本作の仕様に限っては、特にストレスなく読めた。 前作『ゴリラ』とは違う方向性で、非常に面白い。 勝手な受け取りかもしれないが、作者の狙ったのはスティーヴン・キングあたりの系列の作家、その諸作によく見られる、登場人物多数、場面モザイク構築の大作、そんなスタイリズムの借款と咀嚼だと思う。 登場人物は、名前が出てきてメモを取ったのが約75人。あーこれはワンシーンだけかそれに近いモブキャラだな、と類推してメモ書きをスルーした登場人物も加算すれば、たぶんネームドキャラは優に100人を超える? うまい、と思ったのは、登場人物の年齢設定をほとんどあえて記述しないことで(例外は二人の男子くらいか)、そのおかげで<実はあのキャラとこのキャラは同世代であった><このキャラとそのキャラは学友だった>など、ちょっとだけ予想外の関係性が、あとからあとから少しずつ、あれこれ明かされる構造になっていた。この辺はその徹底ぶりからして、作者の意図的な演出だろう。 帯で大森望は「~コメディ」という修辞を用いてるが、個人的にはあまりその言葉は読んでる間、意識しなかった。いや別に異論があるわけじゃないんだけど、どっちかというと「スラプスティック」ではあってもコメディとはちょっと違うような……まあ、いいかな。地方の町を引っ掻き回す大騒ぎをどういう視座で眺めるか、の問題だろうし。 書き手のセンスや才気は十二分に認めるが、それ以上に筆力と書き込みの量感がそのまま(キング的作品という)スタイリズムに転じた、結構、オモシロイ(と思える)形質の一作。 もしも作者が一冊一冊、違うものを書こうとしてるのだとしたら(まあ『ゴリラ』も再読すれば、本作と通底する部分が何か見えてくるかもしれんが)、次にどんなものが来るのか、なかなか楽しみである。 |
No.1 | 7点 | 虫暮部 | |
(2025/05/23 14:51登録) 粗筋紹介でネタバレしちゃ駄目だよ講談社。予備知識無しで読めば2章でまずサプライズがあるんだから! 3章で困惑。4章で更に困惑。笑いこらえつつ第二部。錯綜が生み出すコメディを、さて何処に着地させるのかと読み進むと結構な力技で捻じ伏せてしまった。人々が皆それなりのところに上手く片付いたとは思う。教会のバーンダウンを撮れなくて残念だったね。登場人物が多いので、プロフィールを思い出し易く書く工夫は欲しかった。 |