(2025/06/19 17:58登録)
(ネタバレなしです) 英国のフランシス・ビーデヒングはジョン・レスリー・パーマー(1885-1944)とヒラリー・エイダン・セント・ジョージ・ソーンダーズ(1898-1951)のコンビ作家で、1920年代から1940年代にかけて30作を超す作品を書いていて大半はスパイ・スリラーです。英語原題が「Death Walks in Eastrepps」の1931年発表の本書はマーティン・エドワーズが2014年に「黄金時代の長編トップ10」に選んだ本格派推理小説で、この作者としては異色作のようです。もっとも扶桑社文庫版の巻末解説で「定型には従いませんでした」と紹介されているように名探偵が脚光を浴びるような本格派ではなく、かなりサスペンス小説に寄り添ったようなプロットで殺人場面、逮捕場面、法廷場面など読ませどころが一杯あります。巻末解説で無差別連続殺人の本格派が色々と紹介されていますが個人的にはD・M・ディヴァインの「五番目のコード」(1967年)を連想しました。ディヴァインほどには論理的な推理が披露されるわけではありませんがユニークな動機が印象に残ります。冒頭にイーストレップスの地図が置かれていますがなかなかショッキングな記述があったのも印象的です。
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