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ミステリの祭典

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食刻

作家 柾木政宗
出版日2025年03月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 人並由真
(2025/05/29 16:00登録)
(ネタバレなし)
 24歳の超美青年で、新進銅版画家。若手の文化人としても人気を博す早乙女真琴。彼は自分の才能を見出した、美術界に権勢を奮う大物評論家・影塚孝志の密な後見をいまも受けていた。そんななか、真琴は同世代(25歳)の人気彫刻家・赤塚宏伸と雑誌企画で対談する機会を得るが。

 メルカトルさんのレビューを拝見して、あら? 柾木先生の新刊出てたんだ!? と気が付く。
 しかもメルカトルさんのレビュー(ネタバレ以降はまだ読まないが)によると、かなりスゴそうな内容? ということで、昨夜いっきに読んだ。

 ……なんというか、感想を書くのにも言葉をイチイチ選ばせるような凄惨な話ではあった(十分に広義のミステリではある)。

 しかし作者のマジメ度と本気度が伝わってくる熱気ムンムンの作品なので、不快感の類は存外に少ない(これを涼しい顔で才気だけで書いていたとしたら、それはそれである意味すごいし、凄まじいが)。
 いずれにしろ自分には書き手の発汗ぶりがよく見えるような気がする。
 そういうタイプの作品。

 こってりとした小説を久々に読んだ感触がある。
 改めて自分を振り返って狭義の意味での文学というのは実はよくわからないが、たぶんそれになっている作品ではあろう。いや、あくまでエンターテインメントで、先に書いたように(広義の)ミステリだが。

 ひょっとすると今年の新刊で最初に読んだのがコレか?
 うん、たぶんそうだ。

No.1 7点 メルカトル
(2025/05/05 22:25登録)
早乙女真琴(さおとめまこと)は新進気鋭のアーティスト。高校在学中に美術評論家・影塚孝志(かげづかたかし)の薫陶を受け、日本最高峰の美術大学の絵画科で銅版画を学び頭角を現した。影塚は画壇に君臨し、評価した作品は軒並み価格が高騰、作者は時代の寵児となることが確約されるほどの力を持っていた。影塚の援助とその代償を払い早乙女はさらなる高みを目指すが……。
Amazon内容紹介より。

人間を描くというのはこういう事なんだと思いました。しかしながら決して人には薦められません。その理由は後で述べます。もし奇特な方が読もうとするなら、気力体力が充実している時に読まれる事をお勧めします。
デビュー作からは考えられない、暗くて重いトーンの作品です。これは最早純文学と称しても良いのではないかと思う程品位があります。それなのに内容は暴力と腐蝕に満ちた、ある意味危険なものであり、ミステリ的仕掛けすら施されています。これが征木政宗の本当の姿なのか見極める為、今後も注視していきたいと思います。






【ネタバレ】







まあネタバレというほどではないかも知れませんが、一応本作を語る上で重要なピースだと判断しここで書く事にしました。
この作品では主人公である早乙女真琴とそのパトロンである影塚高志の、男性同士の性行為が克明に何度となく描かれています。エロティシズムと言って良いと思いますが、そう云った描写が苦手な方は注意が必要です。
又、ある種の叙述トリックが用いられています。そしてエピローグでは衝撃的な結末を迎えます。ここで伏線が回収され事前に用意された何気ない事柄が生きて来ます。

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