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ミステリの祭典

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月射病
シムノン ロマン・デュール選集

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日2025年01月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点 クリスティ再読
(2026/05/31 17:56登録)
さてやっと現在進行中の東宣出版の「シムノン ロマン・デュール選集」に追いつくことができた。例の瀬名秀明氏の監修で6冊出るのかな。
で本作は瀬名氏の連載だと本作は「赤道」という映画化タイトルで項目(第36回)がある。この項の「ただ将来、ひょっとして何かの間違いが起こって(?)日本にシムノンブームが再来し、新たに訳出紹介が進むことがないとも限らない」が叶いつつあるようで目出度いなあ。

というわけで瀬名氏肝入りの作品である。舞台は仏領ガボン。アフリカ舞台のシムノン作品はいくつかあるんだけど、瀬名氏は長島良三氏が営業的配慮で紹介を渋ったのではなどと憶測している。「フェルショー家の兄」の背景の話とか、「しっぽのない小豚」収録の短篇「命にかけて」がアフリカの話だから、少しくらいは紹介されていないわけでもないか。

シムノンお馴染みのボルドーの街ラ・ロシェルの名家出身の青年ティマールは、一旗揚げようと伯父の紹介でガボンに渡った。上陸した港町リーブルヴィルのホテルでティマールはホテルの女主人アデルとわり無き仲になる。アデルは黒人ボーイの殺人に関りが?ティマールとアデルは上流のジャングルの借地権を買い取り川を遡るが、リーブルヴィルでは黒人ボーイ殺人事件の裁判が?

という話。ティマールは意気揚々とアフリカに渡ったわけだけど、女に溺れてデング熱にかかったりなど、目的を見失いどんどんと衰えて自滅的な行動を取ることになる。それをアフリカの強い日差しによって罹る「日射病」というよりも、狂気の月光として「月射病」と喩えて、「幻想のアフリカ」というべきものを描こうとしている雰囲気。夢破れたティマールは「アフリカなんて、存在しない!」と言い切ってしまうのだが、主観的な小説だね。
う~ん、青年の客気みたいなものと、すべてを飲み込む異郷という対立軸の小説かもね。川を遡るあたりコンラッドの「闇の奥」を意識しているみたいに見える。
意気込みは買うし、瀬名氏が「別なシムノン」を提示したいという思いはわかる。でももう少ししっかり展開した小説で読みたいな。

No.2 6点 人並由真
(2026/02/06 23:15登録)
(ネタバレなし)
  あらすじと断片的に目についた作品解説、さらにネットでの感想&ウワサなどから<広義のミステリとはいえる、事件性のある小説>を予期して読み進む。その意味では、いつもの(大半の)非メグレもののシムノンの一冊。

 で、実際にその通りの作品なのだが、中盤はアフリカの奥地での黒人現地人の文化描写がやや長めであった(といっても大した事はなく、読むこっちの辛抱が足りないだけかもしれんが)。  
 しかしながらヤマ場で物語のコアに分け入るあたりの手応えは、正にいつもの&のちのちの、シムノン。主人公のジョゼフ・ティマールは、ある意味で、<異国の地でメグレに会えなかった若者>であった。

 ラストの叫びなど生硬だな~と思えるところもあるが、それもまた本作の個性ではあろう。

 たぶんシムノンの非メグレものの中でも上位にくることはないと思うが(作品の出来不出来というより、単に作者の著作の絶対数が多すぎるため)、シムノンに薄く長く付き合ってきた者として、記憶の片隅に残したい一編。

 巻末の瀬名先生の解説はとてもお勉強になると同時に、良い意味でのファントークで非常に楽しい。 

No.1 6点
(2025/04/25 19:35登録)
1933年、メグレ以外のRoman dur最初期作品です。舞台はアフリカ中西部のガボン、主役のジョゼフ・ティマールが伯父の口利きで、首都リーブルヴィルに赴任してくるところから始まります。監修・解説の瀬名秀明氏によれば、パリの霧も雨も出て来ず、「読者の目には異色作と映る」かもしれないが、「旅の作家」であるシムノンにとっては「人生の方向を決めるほど重要な一篇」だということです。
第1章最後でホテルの黒人ボーイが殺され、その犯人は途中で判明、エピローグ的な最終章の前の章はその殺人事件の裁判、という構成であるにもかかわらず、あまりミステリっぽくない話の作りになっています。いくらフランス植民地時代のアフリカでも、こんなでたらめな裁判があり得るのかと思えますし、なんとも居心地の悪くなるような結末です。
なお、単に「月明り」とも訳せるタイトルの言葉は最終章で出てきます。

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