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ミステリの祭典

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日影丈吉傑作館

作家 日影丈吉
出版日2015年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 ALFA
(2025/04/03 08:49登録)
初読。なるほどこれが日影丈吉か・・・
奇妙な物語を紡ぎ出すパワーを感じる。一方でその物語がページの向こうで勝手に展開して完結してしまうような、置いてけぼり感があるなあ。
これに比べると近年のミステリー作家の読者へのサービス精神の豊かなことよ。

お気に入りは「かむなぎうた」。豊潤な物語のなかにヒヤリとするミステリー風味がある。なにやら不安なエンディングもいい。

No.1 7点 クリスティ再読
(2025/03/26 15:00登録)
河出文庫の傑作選。

考えてみれば、日影丈吉って「戦後派」の中で、ミステリ趣味と文学性を完璧に両立した「文学派」の最上の作家かもしれない。探偵作家クラブの頃から探偵文壇の裏方をいろいろ勤めたり、フランス作品メインで翻訳をやったりと、派手な文壇中心人物でもないのだが、読後の印象ではカテゴリーから外れた「異端作家」というよりも、「文学派」の実力者という評価になりそうだ。

まあ当然「かむなぎうた」とか「狐の鶏」とかは読んでいて実力のあたりは把握しているんだけど、まとめて読んでミステリ趣向を小説にする力が傑出していると思う。「かむなぎうた」でも主人公の少年の幻想と奇抜な凶器の組み合わせの妙が、土俗的な背景の上で融合しあって「名品」と呼ぶべきものに昇華している。すごいな。

秋成で有名な「吉備津の釜」をヒネって使った同題作も、久々の水上バスから子供の頃のふしぎな記憶を介在させて間一髪で犯罪の犠牲になるのを回避する、サスペンスフルな話。文学的な元ネタを背景に少年時のイメージを重ねて膨らませて..という丁寧なプロセスに敬服する。

だから確かに凄いけど、職人的なうまさ、が前面に出過ぎるのかもしれない。
そうしてみると真正面のファンタジーになる「泥列車」あたりは、「うまさ」が必ずしも作品としての独自性として花開かない恨みがあるようにも感じる。
いやいやそれでも、この人評判のいい長編がいくつもある。ちょっと気を付けて読むようにしたいなあ。

収録「かむなぎうた」「東天紅」「彼岸まいり」「ねじれた輪」「食人鬼」「吉備津の釜」「消えた家」「天王寺」「夢ばか」「人形つかい」「ひこばえ」「泥列車」「明治吸血鬼」
「彼岸参り」は月を墓地として使うアイデアのSF。「食人鬼」は戦争末期の南方で、飢餓からの食人の噂に追い詰められる話。「天王寺」「夢ばか」はショートショート。「人形つかい」「ひこばえ」はモダンな怪談。「明治吸血鬼」はハイカラ右京の一編。
傑作選だけあって、バラエティ豊か。それぞれ高レベル。

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