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ミステリの祭典

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そして少女は、孤島に消える

作家 彩坂美月
出版日2025年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2025/07/16 06:52登録)
(ネタバレなし)
 とある経緯から演劇の道に入った、子役少女・井上立夏。彼女は10歳でのデビュー直後、のちのち8年もの長寿番組となる人気テレビドラマ『クローバー』の主要ヒロイン「つばさ」役で日本中に知られる存在となった。だが番組が最終回を迎えた現在、18歳の彼女は新たな挑戦の機会を求めて、異才だが不穏な噂のある映画監督・高遠凌(しのぐ)の作品に出演するチャンスを得る。立夏は主演を競う17歳から21歳までの同世代の女子とともに、とある孤島に向かうが。

 これで数冊は読んでるはずの彩坂作品。どーもこの人の著作は、いつも面白そうなことをしてくれそうな一方、大抵、もうひとつハジけない印象がある。
 
 今回の設定が一種のクローズドサークルものであり、ミステリ的にある種の仕掛けをしていることは帯に書かれたあらすじから見え見え(その辺は現代ミステリを30冊も読んでれば、ハハーン、とピンとくるでしょう?)。
 でも筋立てはとりあえずのネタを割と早い段階で割り、その上で今回はお話の転がしようで割に面白い方に引っ張っていった。
 
 終盤のサプライズはかなりの大技な一方、ミステリとしてまたお話の作劇として、送り手のマジメでお行儀のよい創作の仕方がかえって……という気もしないでもないが、まあその分、よくまとまったとホメるべきが本当だろう。
 パズラーというよりフランスミステリという趣で、そういう言い方をすると、展開期の泡坂妻夫あたりにちょっと似てるかも。
 かたやこの丁寧な仕上ぶりが、なんか(中略)だなあ、と軽く反発する人もいるかもしれない。うん、そういう気分も実はよくわかる。

 妙な言い方だけど、力作のBの上、という感じの一冊。キライではまったくないけれど、すっきりホメ切れない面も多い手応え。そーいう意味では、やっぱり彩坂作品らしい、んだろうね。
 評点はこの点数の中での、まあまあ高い方で。

No.1 5点 まさむね
(2025/03/16 14:18登録)
 若い女性5名を無人島に集めて行われる映画のオーディション。10歳でデビューし、人気子役となった18歳の井上立夏もその一人だった…。
 現実パートと演技パートが交互に出現し、不穏な空気が漂います。その空気感が嫌いということはないのだけれど、個人的には多少しつこいかな…という気も。ラストは、もっとディープなトコロを想定していたのだけれど、結構あっさり味なのね…という印象も。採点はこのくらいか。

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