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ミステリの祭典

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トゥモロー・ネヴァー・ノウズ

作家 宮野優
出版日2023年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 糸色女少
(2025/10/25 20:59登録)
同じ一日を何度も繰り返す、タイムループを扱った作品。
第一話「インフェルノ」の主人公は娘を殺害された「私」。病院に入院した犯人をめった刺しにして復讐を果たし、警察署の中で眠りについた私は、自室で目覚めた。犯人を殺したはずの時間より前に自分がいることに気付いた私は再び病院に向かうが殺害に失敗してしまう。トリッキーな設定の物語は、思いがけないサプライズを見せて終わる。
以降、世界各地を舞台に四つの物語が展開されていくのだが、その日の学園を守るヒーロー、それでもなお強さを追い求める格闘家、ウェブニュースの掲載をやめない記者、図書館の膨大な書物を読み進める読書家。それぞれの物語がそれより前の物語と意外な形で繋がりながら、大きな作品世界が立ち上がっていく様が見事。

No.1 7点 まだ中学生(仮)
(2025/03/14 20:13登録)
時間が戻る物語だが、そのことを誰もが認識してしまうようになるところが独特。娘を殺された母親が、未成年だったため釈放され今は入院中の犯人を病院まで追いかけて殺害するが、しばらくすると時間が戻ってしまい、改めて殺害に出向いては捕まったり失敗したりする時間を繰り返す。程なく同じ時間が繰り返されていることを知る人が周囲に現れ、犯人も自分が殺されることを知ってしまう。
何をしても元に戻るなら、やりたい放題になって世界は荒廃するのか。そのような時期もあったが、悪事から人を守ろうとする人々が現れたり、ある周囲だけで世界が関心を寄せるイベントが開かれ、その記憶だけが同じ時間を繰り返す中で残り続けたりする優しい状況へと移っていく。仮定の世界に順応していく人の思考や行動を想像させる作品。

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