感応グラン=ギニョル |
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作家 | 空木春宵 |
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出版日 | 2021年07月 |
平均点 | 7.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | メルカトル | |
(2025/03/19 22:10登録) 昭和初期、浅草六区の片隅の芝居小屋。ここでは夜ごと、少女たちによる残酷劇が演じられていた。ある日、完璧な美貌を持つ新入りがやってくる。本来、ここにそんな少女は存在してはいけないはずなのに。彼女の秘密が明らかになるとき、〈復讐〉が始まる。退廃と奇想、呪縛と変容。唯一無二の世界を築き上げる創元SF短編賞出身の鬼才、空木春宵のデビュー作品集がついに文庫化! Amazon内容紹介より。 一読後、これは異形の文学だと思いました。誰でもない独自の世界を構築しながらも、それをエンターテインメントへと昇華している手腕は注目すべきものがあります。最初の表題作の冒頭から惹き込まれました。何かが始まる予感に期待が膨らみます。万人受けするとはとても思えませんが、一部のマニアには熱狂的な支持を受ける気がします。 耽美、残酷、空想、奇形など仄暗い要素が満載で、ある種大正から昭和初期にかけての空気感が漂いますが、ミステリ的な仕掛けがそれすらも凌駕してしまいます。無論ミステリではなくファンタジーですが、個人的にはとても面白く読めました。ただ慣れない漢字の使い方にはやや手古摺りましたが、一読の価値はあると思いました。と言うか、二度くらい読まないと完全に咀嚼し切れない作品集かも知れないと感じました。 |
No.1 | 8点 | 虫暮部 | |
(2025/03/05 14:21登録) これはまた純度の高い文章。耽美だけでなく日常も的確に書けた上での夜の夢こそまこと。オリジナリティと言うよりは咀嚼力の高さで、とある嗜好に関する絶妙な良いとこ取りを成し遂げている(悪い意味ではない)。一見さんお断りみたいな顔して、意外にも3ページ頑張ったらその先はスルスル読めた。 “苦しみが束になって心を焼き切る” とか、“食べてしまいたい” とか、“肉体の変容” とか、使い回しが気にはなる。そりゃあ同じ命題を何度も繰り返す作家なんて珍しくないものの、短編集の編集をもう少し戦略的に考えても良いのでは。 |