home

ミステリの祭典

login
少女マクベス

作家 降田天
出版日2024年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 虫暮部
(2024/11/24 11:11登録)
 健闘はしているが “天才” を描写するのは難しい、とまず思った。演出家の仕事って部外者には判りにくいし。了の才能そのものよりも、周囲の人の褒め言葉によって彼女を浮かび上がらせている。苦肉の策。ではあるが最後、わたしたちみんなが間違えた、了を神にしてしまった、と言うところに繫がって来るのかも。ところで彼女は眼鏡っ子の筈だが作中の描写が足りないのでは。
 4章冒頭は演劇論に託けてのフェア・プレイ宣言? その自信に相応しく、伏線はしっかり回収され、少女達の仮面を残酷に裏返す様が過不足無く描かれている。情熱と表裏一体のドロドロに目頭が熱くなった。
 エントリー脚本の提出手順は不正を招きかねない方式でちょっとわざとらしい。

 それにしてもネタ元としてシェイクスピアは不滅。基礎教養としてきちんと読んでおくべきか。

No.1 6点 HORNET
(2024/11/16 21:17登録)
 演劇界の人材育成をめざす超名門校「百花演劇学校」。その制作科に籍を置く結城さやかは万年2番手、トップは誰もが認める孤高の天才、設楽了だった。が、その了は学校一番の晴れ舞台・定期公演での舞台「百獣のマクベス」上演中に命を落とす。翌年、了の友人であったという新入生、藤代貴水が入学。彼女は皆の前で設楽了の死の真相を調べる」と言い放った。なぜか、貴水と共に事件の真相解明に乗り出すことになった さやか―

 演劇に身を賭した少女たちの、ある意味閉鎖された価値観の中でのストーリー。貴水とさやかが関係する生徒たちにあたって真相を探っていく過程で、一人一人の秘密が暴かれていく展開は退屈ではなかったが、遅々とした進み方に多少ストレスを感じた。
 登場人物が分かりやすく限られているため、ストーリーを追っていくぶんには理解しやすかったが、同時に真犯人の予想もしやすくはあった。そこそこの分量だが、すらすらと読んでいける展開ではある。ただ、この作者は他作品で自分としては評価が高く、期待が高くなっていたのだが、出色の出来、とまではいかなかったかな。
 しかし、天賦の才能とか、生まれもった別格な存在、なんてホントにあるのかなぁ。実体験がないから懐疑的。

2レコード表示中です 書評