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ミステリの祭典

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素晴らしき犯罪
マローンシリーズ

作家 クレイグ・ライス
出版日1960年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 人並由真
(2020/08/30 21:10登録)
(ネタバレなし)
 古巣のシカゴを離れてニューヨークを来訪中の弁護士マローンと、その友人であるヘレン&ジェークのジャスタス夫妻。3人はNYで知り合ったハンサムな青年デニス・モリスンと夜っぴいて酒宴を開く。だが実は、デニスは初夜を迎えるはずの新郎だが訳ありで、年上の新妻バーサと別行動を取っているようだった。そんな彼らのところに、デニスの妻が殺されたと警察から連絡がある。急いでホテルに戻ると、そこにあるのは首を斬られた死体。だがその被害者の顔は、新妻バーサのものではなかった。

 1943年のアメリカ作品。
 評者の場合、少年時代にあの「世界の名探偵50人」(藤原宰太郎)を読んで以来、その紹介記事で心を惹かれ、自分なりに追いかけてきたジョン・J・マローンもの。しかしどうも長編との相性はよくなかった。
 最初に読んだのが『幸運な死体』だったが、これがなんというか「本当はもっと楽しめるハズなのに、自分がそこまでいかない」ようなもどかしさばかり痛感。同作のユーモア、ストーリー性、ミステリ味、すべてにおいて、である。だいぶ時間が経ってから読んだシリーズ第一作『マローン売り出す』もそんな感じ。

 そんな一方であちこちの翻訳ミステリ雑誌とかで出会うマローンものの中短編には面白いものが実に多く、特にヒルデガード・ウィザースとの共演編は大好物であった(まあこれは、別カウントにすべきかもしれないが~笑~)。
 さらにハンサム&ビンゴの『セントラル・パーク事件』なんか、これはもう自分のオールタイム海外ミステリベスト20候補に入るくらいにスキだし。それだけにマローンものの長編と相性が悪い感触が、どうにも辛かった。

 そんな思いを抱えたまま、今回は心にハズミをつけて本作(これも少年時代に購入していたポケミスの旧訳版)を読了。
 それで、ああ、やっと<本気でスキになれるマローンものの長編>に出会えた! という思いに至った(笑・涙)。
 
 ショッキングな導入部から開幕し、そのあとは主人公3人それぞれの行動で物語をトレース。
 特に、旦那ジェークの描写がよろしい。最高クラスにいい女(ヘレン)を手に入れ、さらにナイトクラブ経営者の地位に収まりながら、それでもまだ「作家になりたい」と人生の欲をかいて、取材のために事件の調査に躍起になる驀進ぶりが笑わせる。
 関わりのできたNY市警のまともそうな警部アーサ・ピーターソンも実はひそかに作家志望であり、両者が事件のなかでこっそり意気投合してしまうあたりのギャグも快い。何やかんやと、この時代らしい都会派ユーモアが全体的に染みた作品である。

 ミステリとしては、事件の真実が少しずつじわじわとあらわになっていくものの、一方でなかなか核心には迫らない。どこに着地するのだろう、とテンション高く物語を追っていたら、けっこう衝撃的な真相を迎えた。
 首が斬られたホワイダニットも、ややイカれた感じはするが、ちょっとした奇想かもしれない。
(ちなみにこの作品に関しては、なるべく細かく、とにかく登場してくる劇中人物の名前をかたっぱしからメモしながら読むことをお勧めする。あまり詳しいことは言わないけれど。)

 シリーズの順番を考えないでつまみ食いで読んでしまったけれど、とにもかくにもマローンものの長編への苦手感はこの一冊でようやく治まりそう。ほかのシリーズ長編も、少しずつ読んでいこう。

No.2 7点 nukkam
(2016/09/02 09:58登録)
(ネタバレなしです) 1943年発表のマローン弁護士シリーズ第7作は魅力的な謎を多く含んだ本格派推理小説としても十分に楽しめるし、ライスならではの人間ドラマがまたたまりません。愉快などたばた劇としても大変面白いのですがさりげなく哀しみや思いやりも織込まれていて読者の心を揺さぶるのが実に上手いです。極めつけは最終章のマローンの「この二人が幸せならマローンだって幸せなのだ」というモノローグ、他人の幸せを心から喜べるのって本当に素晴らしいですね。感心できるミステリーはいくつもありますが感動できるミステリーはなかなかお目にかかれません。

No.1 5点 mini
(2011/10/24 09:54登録)
明日25日発売予定の早川ミステリマガジン12月号の特集は、”ユーモア・ミステリ遊歩 クレイグ・ライス/ウッドハウス/カミ”
便乗企画として私的に遊歩してみるか、似た作風のシャタックを書評したついでに第2弾はクレイグ・ライスだ

ユーモアミステリーと言ったら真っ先に名前が挙がる第一人者クレイグ・ライス
しかし「素晴らしき犯罪」の舞台はいつもの手馴れた本拠地シカゴではなくてニューヨークへ出張、これが微妙にいつもの雰囲気と違っている
なんてーかさぁ、ライス独特の湿った感じが無くて、そりゃ普段から能天気な主人公達だけど今作は特にそれを感じる
得意のユーモアも、ますだおかだの岡田のギャグみたいに上滑りだしなぁ閉店がらがら
ユーモアの中にも独特の陰影があるのがライスの良さなのに、ただ明るいだけなんだよね、やはり「大はずれ」が傑作過ぎるのか「素晴らしき犯罪」はちょっと落ちる、シカゴとニューヨークという舞台の違いなのかなぁ、それとも翻訳者が小泉喜美子なのも原因か
ただ謎解き面だけなら「大はずれ」「大あたり」に比べて「素晴らしき犯罪」も決して引けは取らない
真犯人の設定なども、あまり見た事が無い独特のテクニックがあって、ライスの持ち味を考慮しなければ普通に本格としては名作だろう
それにしても小泉喜美子の訳はこなれてない直訳調が読み難くてあまり好きな訳文じゃないな

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