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ミステリの祭典

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刑事部屋(デカべや)1
部長刑事シリーズ

作家 島田一男
出版日1981年07月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 8点 ALFA
(2024/08/24 08:40登録)
「昭和」は長いから、その時代イメージは人によって様々だろう。
私にとっては昭和30年代こそがまさに「the昭和」。猥雑で活気があって妙にユルい30年代こそは、昭和の大トリ、バブル絶頂への長い一本道の始まりなのだ。
このあたりの気分は「ALWAYS 三丁目の夕日」などではなく「本当は怖い昭和30年代」の方が的確。
この連作短編にはその30年代の匂いが濃厚に漂っている。
時代背景と文体とプロットが一体になって、ミステリーを超えた全体小説としても味わえる。
作者島田一男は人気作家だったが今となっては影が薄い。巨大な松本清張とぴったり時期がカブったことや、平成以降は同様の作風と経歴(記者出身)を持つ横山秀夫の活躍があったせいかもしれない。

No.1 9点 斎藤警部
(2024/08/17 23:59登録)
昭和九十九年の夏に、昭和三十三年の島田一男が大当たり。 この連作短篇はやばい。 脂ののった最高のシマイチ文体がミステリの深い所にまで沁み通っている。 連城「戻り川」を大衆文学の文体と内容とでやり切ったような、文学とミステリの完璧な融合感がある。 地の文ならぬ「文の地」に強烈なスリルがあるからこそホント、読ませること脅迫状の如しである。 予想外の導入部から、最高のシズラーと言える中盤、そしてエンドがどれくらいバッドなのかハッピーなのかまるで見せない巧妙なムードの導線捌きまで、パターンの画一化ってやつが徹底的に排除されている。
今や死語となった職業名(やくざ、堅気を問わず)や風俗・文化事象がさりげなく説明されているのは後年の読者に優しい。 通しの主役はおなじみ新宿署の庄司部長刑事だが、第一話だけは昇進前のヒラ刑事という、ちょっとした歴史の目撃者感も愉しい。
前半三話のタイトルにはミステリ心を最高に唆るものがある(特にオイラのようなS30年代フェチには)。 内容は六話とも高いレベルで拮抗しており、甲乙付け難い!

第一話 俺は見ている
第二話 もう一人知っている
第三話 その血を返せ
第四話 脅迫状
第五話 東京犯罪地図
第六話 七色の地図

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