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ミステリの祭典

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未明の砦

作家 太田愛
出版日2023年07月
平均点8.50点
書評数2人

No.2 9点 HORNET
(2025/09/15 20:23登録)
 大手自動車メーカー「ユシマ」の派遣工・矢上達也ら非正規従業員は、劣悪な環境下で過密な作業に従事する日々を送っていた。人を人とも思わない、ユシマの雇用体制に不満を募らせていたある日、慕っていた工場の班長・玄羽が過密な労働がもとで死亡する。怒りを滾らせた4人は労組を結成し、会社と戦う決意を固める。しかし、世界に名を成す大企業・ユシマは、警察や政治家らとの癒着関係を用いて、全力でつぶしにかかる―

 この国の理不尽な社会構造を力なき者たちが糾弾する、いわゆる「ムネアツ」な社会派小説。単純な勧善懲悪ではなく、生活のために会社に忠誠を誓わざるを得ない従業員の姿、自分たちが虐げられていることを分かりながらも、「非正規」という下を見ることで自身を安定させようとする正規雇用者、それによる対立、一方で自分たちの社会的地位、利権を守ることしか目的にない政治家たち、といったさまざまな社会の病巣や苦悩が、筆者特有の力強い筆致で描かれているのがよい。
 厚みのある作品ながら、読み入ってしまうのも、この作者の作品ではいつも。すごく面白い。

No.1 8点 take5
(2024/07/07 17:36登録)
600ページ超えなのに、一気読みでした。
作者はTRICK2等の脚本も手掛けています
本作品は超社会派です。熱量が凄いです。
元は新聞に連載されていたということで、
ジャーナリズムもまだ死んでないのかなと
だが作品の中では散々な書かれようですが

金権政治、労働問題、警察組織の問題また
戦後日本の民主主義の問題と、多岐に及び
読者に問う作者自身が、取材をしっかりと
されているのがよく分かります。読み手の
自分が自分事で日本の問題を捉えているか
問われていると身の引き締まる思いです。
日本国憲法に触れているところでも、自身
教育に携わる者として大変心に残りました

ミステリー要素は高くないかもしれません
しかし各人が何を考えて行動するのかは、
最後に回収されていきますし、ご都合主義
そう読む方もいるかもしれませんが私には
清々しい希望を感じる終わり方でよいです

東京都知事選挙に出かける事のみ読書休憩
以後一気読みが本作品のもつ力の証明です✨


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