(2024/08/06 18:23登録)
(ネタバレなしです) フランク・グルーバー(1904-1969)のジョニー・フレッチャー&サム・クラッグシリーズは第1作の「フレンス鍵の秘密」(1940年」から第12作の「レザー・デュークの秘密」(1949年)までは快調なペースで書かれましたが、第13作の「一本足のガチョウの秘密」(1954年)は5年の空白後、そしてさらに10年を経ての1964年に第14作の本書がようやく出版され、これが結果的にシリーズ最終作となりました。執筆ペースがスローダウンした理由はわかりませんが、本書も他のシリーズ作品と同じく軽快なテンポで書かれたユーモア・ハードボイルドで特に衰えは感じません。シリーズ集大成のつもりで書いたのかは判断できませんけど、何度もシリーズ作品に登場した「四十五丁目ホテル」でのジョニーと支配人のやり取り、ボディービル本の行商、ジョニーの機転、サムの怪力無双などがお約束のごとく楽しめます。賭けに負けた代償に自作の楽譜をサムに譲渡したソングライターがジョニーとサムの前で毒死しますが、殺人犯捜しよりも楽譜を巡ってのコン・ゲーム的な展開を重視しているのが本書の特徴です。本格派推理小説好きの私としては第21章の最後の説明は好みの真相ではないし、第2の殺人についてはほとんど謎解き説明されていないのも不満です。とはいえ終盤のたたみかけるような勢いはこの作者ならではで、第27章でのジョニーの粋なはからいも印象的でした。
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