列をなす棺 ジャーヴァス・フェンシリーズ |
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作家 | エドマンド・クリスピン |
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出版日 | 2024年06月 |
平均点 | 5.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | 人並由真 | |
(2024/07/28 07:30登録) (ネタバレなし) 第二次世界大戦が終わって数年後。その年の3月の英国。オックスフォードの英文学教授でアマチュア名探偵のジャーヴァス・フェンは、「ロング・フルトン」撮影所で新作史劇映画「ポープの一生」のため、文学面の監修役を務めていた。そんななか、撮影所に出入りしていたハイティーンの女優グロリア・スコットが謎の身投げ自殺をして、騒ぎになる。フェンと旧知のスコットランドヤードの警部ハンブルビーが、グロリアの秘められた事情を調査するが、やがて事件はさらなる広がりを見せていった。 1950年の英国作品。フェンシリーズの第7長編。 『お楽しみの埋葬』の後日譚で、ワトスン役(みたい)のハンブルビーはそこで初登場だそうだが、評者は未読。『お楽しみ』は、HM文庫版でなぜか美本の新刊を二冊も持っているので、これを読む前にそっちを先に……とも思っていたのだが(汗)。 ドタバタが皆無なのはまあいいし、後半で急に存在感を増す某女性キャラのビビッドな描写なんか、悪くはない。ただし真相に関しては、え? そういう形で叙述!? しかもその人が犯人と言われても……結局、ほかの人でも何人か該当範囲にいるような? あと、そんな理由で(中略)とか、違和感バリバリであった。 面白いときのクリスピン作品を基準にすれば、たぶん確実にシリーズの中でも下位になるであろう出来で、これまで放っておかれたのもむべなるかな。まあそれでも、発掘翻訳してもらってウレシイから、ほぼすぐとびついて読んじゃったのだが。 記号的には面白いはずのことをやってはいるのだが、イマイチいや二つ三つ、その効果が上がらないのが何とももどかしい。 |
No.1 | 6点 | nukkam | |
(2024/07/10 20:52登録) (ネタバレなしです) 1950年発表のジャーヴァス・フェンシリーズ第7作の本格派推理小説です。論創社版の訳者あとがきで「ファルス要素の少ない異色作」と評価されていると紹介されていますが、終盤にちょっとした活劇場面はあるものの(いくつかの他作品のような)どたばたレベルではないし、ユーモアはほとんど感じられません。トリックも見るべきものがありません。プロット展開も風変わりで、グロリア・スコットと名乗る女性(本名ではない)の自殺事件が起きて(目撃情報から自殺に間違いないとされる)、何が彼女を自殺に追い込んだのかという謎解きが前半の中心を占めています。中盤でハンブルビー警部が事件関係者のクレイン一族を事情聴取する場面はフェンが不在ということもあって地味過ぎます。大きな欠点はないように思いますが他の作品と比べるとこれはという強力な魅力も欠けるように感じました。余談になりますがグロリア・スコットと言う名前で私はコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ某短編を連想しましたが、本書の作中ではそれを示唆するような場面はありませんでした。 |