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ミステリの祭典

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善人は二度、牙を剝く
ブライアン・アーミテージ、チェビオット・バーマン

作家 ベルトン・コッブ
出版日2024年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 人並由真
(2024/07/07 15:33登録)
(ネタバレなし)
 宝石泥棒事件の被害者レディー・クリフォード。その盗まれたダイヤの行方を追うスコットランドヤード捜査部のブライアン・アーミテージ巡査部長は、窃盗の容疑者である犯罪者マッケンジーと接点がありそうな下宿屋のルダル家に目をつけるが。

 1965年の英国作品。
 評者がベルトン・コッブを読むのはこれで4冊目。なんとなく現状までスルーしているいちばん初期の作品『悲しい毒』を除いて邦訳されたものは全部読んでいるが、今回が最もツマラなかった(汗)。

 薄いし登場人物も多くない(各キャラもそれなりに存在感は認める)、何より翻訳(の姿勢)が丁寧(メイキング事情を語る訳者あとがきを読むとあれこれ感心する)……で、リーダビリティは高いハズなのだが、お話に牽引力がなくってさっぱり盛り上がらない。

 同時代のアメリカの某・警察小説の名作と似たようなネタを設けておいて、そこから(中略)というのはまあいいが、で、その結果、だからどう面白くなったんだよ、である。

 なお論創社の編集(営業?)も売りのない作品のアピールに苦労したのはわかるが、中盤の大きなサプライズを堂々と表紙に書いてあるのも、なんなんだよ、という思い。
 あとnukkamさんのおっしゃるとおり、登場人物が少ないことは、真犯人の可能性が察しがつきやすいことに直結して、微塵もサプライズがない。
(これはあれか? 某・英国の黄金時代作品(たぶんかなりマイナー)で使われた大技か? と予想~というか、そうだったらちっとは面白くなるな、と期待したが、まるでハズれた。)

 改めて、チェビオット・バーマン警部たちメインキャラ3人の造形や芝居は悪くない、というかイイんだよ。ただこれ(この本作)って、もっともっとシリーズの翻訳がさらに冊数進んで、十数冊くらい主役トリオに親和感が定着し、そんな上で、たまにはこんな枯れた作品もいいか……という気分で手に取っていたら、もっとずっと楽しめたんじゃないか、とも思う。
 たとえば87分署シリーズを飽食したファンが、まだ読んでない二流半とウワサのシリーズの一冊を手に取ったら、なんだこれもそこそこイケるんじゃないの、という感想に行きつくような。

 オレが10年ほど前、ワクワクしながら『消えた犠牲』を手に取って、それなり以上の充足感を感じた際の、あのベルトン・コッブはどこに行ってしまったんだろう(汗・涙)。

No.1 6点 nukkam
(2024/04/12 04:35登録)
(ネタバレなしです) チェビオット・バーマン警部の部下のブライアン・アーミテージ巡査部長をシリーズ探偵にした作品の先駆けとなったのが1965年発表の本書で、チェビオット・バーマンシリーズ第32作でもあります。ダイヤモンド盗難事件の議論でルダル一家の容疑を巡ってのバーマンとアーミテージの対立、そして納得いかないアーミテージが独断でルダル一家に下宿人として潜入捜査する前半が「善意の代償」(1962年)を連想させますが、「善意の代償」以上にサスペンス豊かに展開します。もっともそれまでの捜査でルダル一家と面識のない設定のアーミテ-ジがなぜそこまで怪しいと確信していたのかは不思議ですけど。警察小説と本格派推理小説のジャンルミックス型作品で、容疑者が少なくて意外性などないに等しい謎解きですがアーミテージの成長物語としては十分に面白いです。

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