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ミステリの祭典

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秘祭ハンター 椿虹彦

作家 てにをは
出版日2020年05月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 ALFA
(2024/03/22 08:41登録)
清張の「日本の黒い霧」と平行して読んでいたので、文体のギャップにめまいがしそうだった。
B級的表紙絵、ラノベ文体、チャラいキャラ、にもかかわらず中身はなかなかのホラーミステリー。
マニアックな大学講師と富豪の女子学生が「秘祭」を巡る、三話の連作中編。
それぞれを三津田信三や知念実希人が長編化すればさぞ読み応えある名作になるだろう、と言えば雰囲気はお分かりいただけるだろうか・・・

残念なのは秘祭巡礼のきっかけとなる、女子学生潮のトラウマ幻影が解明されていないこと。これはもしかして続編への布石か。

No.1 8点 メルカトル
(2024/03/13 22:20登録)
なんらかの理由で世間から隠され、ひっそりと行われている祭――それが秘祭。
潮は大学で講義をしていた「秘祭ハンター」と呼ばれる小説家の虹彦に、幼い頃に見たであろう「桜の木に沢山の人がぶら下がっている祭」の捜索を頼むことに。
体よく虹彦に使われながら様々な秘祭に同行する潮。
そこで目にした現代とは思えないような神事と、祭と人々が秘めていた真実とは……?
摩訶不思議なお祭りミステリー開幕!
Amazon内容紹介より。

第一話が人が空を飛ぶ祭、第二話が一夜にして現れ祭が終わると跡形もなく消える村の祭、第三話が人形だらけの村で人形同士が戦う祭。確かに秘祭と呼べる奇妙なものばかりです。それらを大学の講師で作家の椿虹彦とお嬢様で彼の講義を受講する潮が体験するのだが、どれも訳ありで事件が勃発するという、長めの連作短編集。タイトルを見る限り、B級臭がプンプン臭いますよね。そして一種の冒険小説なのかと想像されるのも当然でしょう。しかし、これは本格ミステリだと私は断言します。普通の感覚だと6点が妥当な評価かも知れませんが、私にとってはこの上ない極上の読書体験だったと考えます。

てにをはは田舎を描くのも上手いのを実感しました。物語の流れもスムースで手際よく人物を紹介しながら進め、秘境に読者をグイグイ引き込んでいきます。虹彦と潮のマウントの取り合いも読みどころの一つで、人間の闇の部分を掘り下げる描写のえぐみを緩和する役割を果たしていると思います。
二話目は他にやや劣るものの、一話目三話目は雰囲気と言い、仕掛けと言い、事件の裏に隠された人間の業や歪んだ志向と言い、いずれも際立っており、最高のミステリでしたね。終幕の「祭の後」の余韻に浸りながら、とんでもない拾い物をしたなと思いました。多くの方に読んでもらいたい作品です。当然続編も期待したいところです。

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