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ミステリの祭典

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じょかい

作家 井上宮
出版日2020年12月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2024/03/09 22:34登録)
男はリビングでくつろいでいる。キッチンでは妻が夕食の支度をしている。幼い息子は冬でもないのにマスクをつけて、テレビ番組を見ている。男はキッチンへビールを取りに行く。妻の作っている料理に「美味しそうだね」と声をかけ「息子は風邪でもひいたのか」?と聞く。そしてふと気づく。自分たち夫婦に息子なんていただろうか? そして妻を見て驚愕する。誰だ、この女は? なんだ、この大きなマスクは?
Amazon内容紹介より。

正にノンストップホラーと呼ぶに相応しい作品。序盤こそそこはかとない郷愁の様な雰囲気を醸し出して、そこが私には好ましく心に刺さるものがありましたが、次から次へと様々な事件や事柄が起こり、話がスピード感を伴って動くのに付いて行くのが大変でした。最早途中から心が麻痺して何が起こっても驚かなくなってしまいます。よく考えてみれば異常事態の連続なのに、何となく納得してしまう説得力がこの小説にはあります。

読む程にこの作者は何者なんだと思わされる迫力を有しています。ウィキペディアでもあまり情報がなく、えぇーなんだよう、となりました。年齢さえ明示されていないのはあんまりじゃないですか。
デビュー短編で小説宝石新人賞を受賞したそうなので、そのうちそれを含む短編集でも出してくれないかなと思っている次第です。この人の実力は本物だと思いますね。

No.1 5点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2024/02/22 15:28登録)
表情・服装・行動とも精神が壊れているかのような女と、多重人格のごとく振る舞う少年、悪臭漂う謎の流動食という神経・生理的な嫌悪感を伴う恐怖に、日常が不条理に侵食されていく不安。
主人公のネガティブな精神状況にかけられる追い打ち。そして、ある仕掛けから明らかになっていく伝奇的な広がりの妙。都市伝説を情報の問題ではなく、あえて実態としてとらえたB級ホラーの怪作。

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