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ミステリの祭典

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母親探し
ネロ・ウルフ

作家 レックス・スタウト
出版日2024年03月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2024/05/17 19:08登録)
(ネタバレなし)
 その年の5月20日のニューヨーク。9か月前に42歳で逝去した人気小説家リチャード(ディック)・ヴァルドンの屋敷に男児の赤ん坊の捨て子があった。メモにはこの子は故人(リチャード)の遺児ですと書かれている。リチャードの未亡人で26歳の美女ルーシーは、ネロ・ウルフ探偵事務所を訪問。赤ん坊が本当に亡き夫の庶子なら引き取って養育も考えるので、まずはメモの真実とこの子の素性、誰が母親かを調べてほしいと相談を願う。「ぼく」ことウルフの助手アーチー・グッドウィンは、ルーシーと距離を狭めながら手掛かりを探るが、やがて予期せぬ殺人事件が。

 1963年のアメリカ作品。
 漠然とした人探し(情報調査)の依頼から始まって、いささか唐突に殺人事件に連鎖する。そのあたりの話の流れのテンポの良さは、秀作『黄金の蜘蛛』を思わせる(なお、その被害者が殺されていささか痛ましいキャラなのも、同作と同じ)。

 これは面白くなるかな? と期待したが、後半は、出て来るキャラクターたちの全般に精彩がなく、かなり退屈。個人的には『腰抜け連盟』と同様に、キャラばかりムダに出て来る感じだった。
 当然ながら、nukkamさんのおっしゃるように、真犯人が判明しても、ああ、そうですか(読み手的には、誰がホンボシでも、ほとんどどうでもいい)という感慨であった。

 ウルフシリーズのなかでは、オチる方じゃないかと。
 まあ、こういうのもあるでしょうね。長期シリーズなんだし。そういうのに出会うこともあるのも、ミステリファンの人生だと割り切ろう(笑)。

No.1 5点 nukkam
(2024/03/29 03:49登録)
(ネタバレなしです) 1963年発表のネロ・ウルフシリーズ第26作の本格派推理小説です。依頼人は若い未亡人で、自宅の前に「父親の家に住むのが当然だから」というメッセージを添えられて捨てられた赤ん坊の母親を探して欲しいと依頼してきます。赤ん坊の母親を探すための試行錯誤の捜査が読ませどころで、特に第12章で「殺人は自策で」(1959年)に登場した女性探偵サリー・コルベット(アーチーは現代最高の女探偵と絶賛しています)の助けを借りての写真大作戦が面白いです。もっともサリーは一言も発せず描写は極めて地味で(論創社版の登場人物リストにも載っていません)、ここはもっと盛り上げる演出が欲しかったですね。途中で殺人事件も発生しますがウルフはそちらは警察まかせと解決に乗り気ではありません。もちろん最後には殺人犯を指摘するのですが推理はそれほど印象に残らず好都合な証人に助けられており、他の容疑者が犯人であってもおかしくないように感じました。

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