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ミステリの祭典

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抜け首伝説の殺人 巽人形堂の事件簿

作家 白木健嗣
出版日2023年10月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2024/02/10 07:13登録)
(ネタバレなし)
 三重県四日市。その年の冬、一人の女子中学生が、老人の首が夜間に空中を飛翔する怪異を目撃した。それから少しして市内の老舗の酒蔵・加賀屋をまだ22歳のからくり人形師・巽(たつみ)藤子が訪れる。人間国宝だった人形師を亡き祖父に持つ藤子は、加賀屋の当主で当年70歳の蔵之介から頼まれ、からくり人形「現身(うつしみ)」を修理しに来たのだ。加賀屋の中年女性の従業員・早川が藤子を迎え、その夜、加賀屋では藤子や近隣の同業者を交えた宴が開かれるが、惨劇はそのあとに起きた。

 確かにあまり新しいものはないのだが、本文一段組・約200ページ前後の程よく短めの紙幅は心地よいリーダビリティに直結し、最後まで楽しく読めた。江戸時代の故事にまで広がる物語の組み立て具合は、現在形の殺人劇と危ういバランスの一歩手前で、独特の均衡感を抱かせる。

 思い付きで言葉を選ぶなら、昭和のB級パズラーの佳作の器のなかに一級半の2010年代以降の新本格を押し込めた感じ。 

 名探偵役の藤子の軽妙かつ陽性のキャラクター(でもちゃんとシリアスな奥行きも作者が計算的に設けてある)は、いかにも映像化栄えを視野に入れた感じだが、それら全部を見やった上で、なかなか魅力的。カリカチュアされた性格設定のワトスン役・早川の造形もよい。

 この副題&最後のまとめ方から当然シリーズ化はするのだろうが、ちょっと楽しみにしておこう。

No.1 5点 虫暮部
(2024/01/17 12:06登録)
 妖怪話や田舎の情緒で雰囲気を出したいのか、事件捜査の整然とした流れで行くのか、どっちつかず。真相よりダミー推理の方が印象的。破綻はしていないが、新しい何かと言ったものではなかった。視点人物の卑屈なキャラクター設定は良いかも。

 “100年” なるイラストレーターによる装画がやけに怖く感じて見る度に心臓が暴れるんだけど、どう?

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