home

ミステリの祭典

login
レッドクローバー

作家 まさきとしか
出版日2022年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 びーじぇー
(2024/07/01 23:09登録)
豊洲のバーベキュー場で、ヒ素を使った無差別殺人が発生。犯人の丸江田はSNSで知り合い、その日初対面となる富裕層の人々を集めて、そのパーティを主催していた。具体的な動機は語らず、「ざまあみろって思ってます」という供述から、社会への鬱屈した恨みが丸江田を犯行に走らせたと見られていた。
この事件を追う雑誌記者の勝木が思い出したのは十二年前、北海道の片田舎で起きた赤井家一家殺人事件。助かったのは当時高校一年生だった長女・三葉だけ。供述が二転三転したこともあり、三葉の犯人説も根強かったが、決め手がなく結局迷宮入りしていた。
東京と北海道、過去と現在を行き来しつつ、真相に辿り着く。その過程はとても息苦しい。三葉の過去や彼女を取り巻く社会の現実。人間の生々しさ、個としての人間よりも手に負えない「社会」や「集団」の怖さを思い知らされた。

No.1 7点 HORNET
(2024/01/13 21:17登録)
 東京のバーベキュー場で起こったヒ素による大量殺人。記者の勝木は、12年前に北海道で起きたヒ素による一家殺害事件を思い起こす。高1の長女ただ一人生き残ったその事件で、勝木はその長女を一度だけ目にしていた。東京の事件は別の容疑者が現行犯で逮捕されたが、二つの事件は無関係なのだろうか―?個人的な思い入れも含みながら、勝木は12年前の事件を再度調べ出す―

 読者を引き込む魅力的な展開は相変わらず。12年前の事件があった北海道・灰戸町の住人たちの前時代的なムラ社会文化の描写がまた面白い。真相は結構入り組んでいて、偶然ができすぎているきらいもあるが、それらがダイナミックな仕掛けに結び付いているのだからまぁ…致し方ない。
 ヒールである赤井三葉に、ヒール足りうる魅力を感じざるを得ないが、それ自体がひっくり返されていく後段は、なかなか怒涛の展開だった。

2レコード表示中です 書評