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ミステリの祭典

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聖乳歯の迷宮

作家 本岡類
出版日2023年11月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 makomako
(2024/02/21 21:41登録)
最初はとても面白い。キリストの乳歯が見つかった。キリストが幼少時暮らした後の遺跡からキリストの時代に一致した乳歯が見つかり、ミトコンドリアの遺伝子を調べたら現代人のゲノムと異なっていた。現代人とは違った人種であり、これが神の証拠なのだということとなった。
凄い発想です。
どうなることかと思って読んでいくと、探偵役主人公の同僚の死亡(殺人か?)、妻の浮気?実はカルト宗教にのめり込んでいた、など色々出てくる。絶海の孤島青ヶ島のお話も絡む。
登場人物は少なく、殺人としたら犯人は誰か、キリスト教がべらぼうに発展してきてしまうのがどうなるのかが、全く分からないのに残りページが少なくなってくる。これで解決するのかと思いきや意外な反転でお話は解決してしまう。
一応話が解決し、犯人もその意図も分かるのだが、どうもすっきりしないのです。


以下ネタバレ
普通に見える人間がその奥に異常性を秘めているということは、本格推理ならむしろ普通にある設定ですが、このお話では探偵が長い付き合いのある犯人の異常な性格が今まで全く分からなかったというのはちょっと腑に落ちないのです。とんでもないやつなんですから、長く付き合っていれば絶対わかりそうなものですがねえ。

No.1 6点 虫暮部
(2024/01/05 13:32登録)
 キリストの乳歯~神の実在~宗教ブーム、と世界の変容を大胆に描く部分は面白い。比較するとスケールダウンするものの、青ヶ島の鬼関係も興味深い。 
 ただ、この二つがつながるの? と言う部分で、てっきり伝奇ミステリにありがちな歴史ネタと現代の事件を強引に連結するあの手の奴かな~と見切ってしまった。どちらか片方だけで良かったんじゃない、なんて思ったりもして。
 ところが、意外にもラストで両者がかなり鮮やかに結び付く。これにはびっくりで、御見逸れしましたと言うしかない。
 犯人の動機も良い。一方で、主人公(と言うより狂言回し?)のキャラクターは今一つ。なんだけど、ここに凡人を配するのはバランス的に重要かもしれない。

 “神が作った密室” のフェアネスは微妙な気もする。専門家が “不自然だと感ずることは何もなかった” と証言したら、読者はそれを信じるしかないじゃないか。
 しかし、何らかの犯意を想定するなら、あの石灰岩の壁を壊すしかない。具体的な手法は不明でも疑うことは出来たか(特殊な知識だからアンフェアだ、との論法には私は与しないので)。専門家であっても名前を付与された主要人物だから、間違えることもアリか? うーむ。

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