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ミステリの祭典

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孔雀屋敷 フィルポッツ傑作短編集

作家 イーデン・フィルポッツ
出版日2023年11月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 ことは
(2024/07/14 02:03登録)
良くも悪くも、古き良きミステリかな。良くとるか悪くとるかは、読む人次第。
想像以上にトリッキーな部分が多く、それも含めて、古き良きミステリ。小説家としてのフィルポッツの地力は感じられる。
唯一「鉄のパイナップル」だけは、キャラの特殊性から、現代的に感じられる。

No.1 7点 人並由真
(2024/02/13 03:10登録)
(ネタバレなし)
 意外にも巨匠フィルポッツの、初の日本語での短編集だそうである。内容は独自に編集。そういえば確かにこの人の邦訳の単独書籍は、長編しか見たことなかった。

 6編を収録。
 以下、簡単に感想&メモ。

・「孔雀屋敷」(1926年の短編集に収録)
……35歳の独身の女教師ジェーン・キャンベルは、デクオン州に住む彼女のゴッドファーザーで亡き父の友人だった85歳の古老ジョージ・グッドナイフ将軍の家で、休暇を過ごす。だがジェーンは近くの「孔雀屋敷」で世にも不思議な状況に出会う。
 オカルト要素を仕込んだ奇譚風のミステリ。骨組みのしっかりした話で、なかなか。良い意味でおとぎ話っぽい。
 あーそーいえば、確かにこれ、旧訳が「日本版ヒッチコック・マガジン」に載ってたな。たぶん読んでなかったけど(汗)。

・「ステパン・トロフィミッチ」(1926年の短編集に収録)
……ロシア文学の短編風の物語。終盤でミステリに転調するが、それがなかなか鮮やかというか心地よい。猫への虐待描写が不快。

・「初めての殺人事件」(1921年の雑誌初出)
……運命はふとしたことから……テーマのミステリ。なんかこれも、苦いおとぎ話を読むような面白さがあった。

・「三人の死体」(1921年の雑誌初出)
……乱歩のアンソロジーに収録の「三死人」の新訳。そーいや、たぶんこれも読んでなかったなあ。「初めて~」路線の、当人は一本筋を通したつもりで、周囲に迷惑がかかる話……というか。足で調べまわり、真相に迫る主人公の描写と、終盤の(中略)。これもイケる。

・「鉄のパイナップル」(1926年の短編集に収録)
……イカれた男のイカれた話。狙いはわからんでもないが、本書中では一番つまらなかった。フィルポッツのおなじみの主題っぽい? そうといえばいえるかもね。

・「フライング・スコッツマン号での冒険」(1888年)
……小冊子の形で単独刊行された短編(短めの中編)だそうで、フィルポッツのいちばん最初の著作(著書)といえるものらしい。ディッケンズの世界のコンデンス版みたいな内容で、なかなか面白かった。

 書籍一冊のジャンル的には「三人の死体」だけが、まあ「本格」といえるかで、これ(短編集まるまる一冊)なら「短編集(分類不能)」が適当だと思えます。 

 総じて、少年時代に学習雑誌の別冊付録で、ジュブナイルにリライトされた海外の名作に出会い、ああ、ミステリって面白い! と感じたころの初心的なトキメキに再会するような作品ばっか。
 そういうのに何を今さら、的に価値を見出さない人(それはそれで健全だと思うが)にはあまり意味のない一冊かもしれん。でもね、私にはこの原石ゴロゴロみたいな感触が、とても心地よかった。

 というわけで個人的には、予想以上に楽しい中短編集でした。100点満点で70点とか80点の意味合いでの7点じゃなく、二重丸とか花マルという意味での7点かもしれんけど、とにかくこの評点で。
 同じ作者のこの路線の続刊も出てくれればいいなあ。

【2024年2月13日21時追記】
 ジャンル分類の投票で、[ 短編集(分類不能) ]への改訂にご協力くださいました有志の方、ありがとうございました(大感謝)。
 無事におかしくないジャンルになったので、本文を部分的に改訂いたしました。御了承のほどをお願いいたします。

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