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ミステリの祭典

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幸せの国殺人事件

作家 矢樹純
出版日2023年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2023/12/19 16:09登録)
(ネタバレなし)
「僕」こと中学一年生の水泳部員・薗村海斗(そのむら かいと)は、級友の男子の桶屋太市(おけや たいち)、女子の烏丸未夢(からすま みむ)とともに、自由度の高いオンラインゲームを楽しむ。三人の目的はヴァーチャルな異世界のなかに、かつて5年前まで現実の地元で営業していた遊園地「ハッピーランド」を再現することだ。だが最近、太市の様子がおかしい。そして海斗と未夢は、現実のハッピーランドの一角で行なわれたらしい? 殺人事件? の記録動画? を目にする。

 これまで読んだ作者の著作のなかでは、いちばんフツーのミステリという印象。
 大雑把に言えば、よくもわるくも21世紀に書かれた、仁木悦子の子供主人公もの(でもジュブナイルじゃなく、一般~大人向け作品)みたいな感触。

 二転三転する展開はまあ良いのだが、小中規模のサプライズが串団子風に順々に転がされてくる作劇に曲がないため、緊張が弛緩。演出の下手さでいささか眠くなった。
 それなりの力作なのは認めるが、もっと構成にメリハリを利かせるべきだったと強く感じる。

 あと小説技法として、主人公の海斗がいきなり初めて出会った重要人物「あんどうあつこ」の名前を耳で聞き、すぐ一人称視点の地の文で「安堂篤子」という(正しい漢字表記らしい)漢字の名前を記述してしまうのもどーなの? と気になった。リアルタイムでの海斗の認識では<安藤敦子>かも<安堂温子>かもしれないのだから、しばらくアンドウアツコ表記で地の文の記述を進めて、正確な漢字表記が劇中で判明した時点で切り替えればいいよね。やり方はいくつかあると思う。

 怪死事件の真相は、ちょっとこの作者らしいかな、と思った。
 評点は、まさに「まぁ楽しめた」なので、この点数で。

No.1 7点 虫暮部
(2023/11/04 13:55登録)
 手堅くピースを積み上げて、軋轢や暴走や和解を描いていると思う。登場人物がみんなコミュニケーション不足で自分勝手だな~。
 青臭い純粋さと欲が交錯する真相、遠い所へ行ったあの人の気持は、ちょっと回りくどい気がして充分納得出来たとは言えない。謎解きの勢いに押されて、詳細の説明が曖昧な部分もある気がする。
 太市の “じゃね?” は鼻に付く。そういえば無断拝借したゲームソフトは返したのか?

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