もしも誰かを殺すなら パトリック・レインシリーズ |
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作家 | パトリック・レイン |
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出版日 | 2023年12月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | |
(2024/02/01 12:57登録) (ネタバレなし) 米国のペンシルバニア州で、5年前に慈善家の大富豪、実は悪党のジェームズ・フルトンが殺された事件。殺人容疑者として逮捕された新聞記者ロバート・リンデンは死刑になったが、その審理に臨んだ陪審員たちはそのときの縁を継続して、一年に一度は大半の者が集う交流の場を設けていた。だがそんな集いの場の周辺に毎回、恨みがましい視線で出没するのは、ロバートの未亡人エルサだった。「わたし」こと盲目の犯罪心理学者パトリック・レインは、友人で陪審員の一人であるアーサー・コナットに誘われ、今年の集いの場である雪の山荘に、ゲストとして参加。隣人でガールフレンド、そしてやはり陪審員のひとりだった故人ティム・オハラの娘でもあるディアドリ(デリー)を伴って、山荘を訪れる。だがそこでレインたちを待っていたのは、5年前の事件に関わる意外な情報と閉ざされた山荘での惨劇だった。 1945年のアメリカ作品。 今回が初紹介となるシリーズキャラクターの盲人探偵(マックス・カラドスやダンカン・マクレインの系譜の)パトリック(パット、パディ)・レインものの一本。 (翻訳書の解説では明記してないと思うが、nukkamさんのご説明によるとこれが第一弾らしい。) 本文230ページちょっとという短めの紙幅の中で、クローズドサークルものの連続殺人劇を展開し、ちゃんとその時点その時点ごとで随時、生きている連中同士による推理の仮説を交換。話のテンポも密度感もなかなかで、リーダビリティも満腹感も申し分ない。 さらに一人称の主人公探偵レインが目が見えないという大設定もストーリー内のギミックにちゃんと活かされ、一級半の長編フーダニットパズラーとしてはなかなかの出来である。最後の意外性も、自分などにはそれなりのインパクトがあった。 その上で、ネタバレにならないように気を使いながら、あえて苦言を言えば、第三章で明かされる<意外な真実>を登場人物の誰も、そんなの虚言でしょ、悪意のある嫌がらせのウソでしょ、の類のツッコミをしなかったこと(評者の見落としでなければ)。 あとお約束の作劇に文句つけるのもヤボだが、あまりにも連続殺人がスイスイ進行されすぎること。後半に行くに従って生き残り連中の警戒心は加速するはずだし、いくつかの殺人に関しては、いやそこまでスムーズにはいかんだろ、実行犯の方もリスキーだし、と思わされもした(作者がそこら辺についてまったく工夫していない訳でもないのだが……)。 優秀作や傑作とはいいがたいが、佳作~秀作クラスの高評なら十分にオッケー。 創元文庫あたりで出ていたら、昨年内の新刊でのかなりの注目作になっただろうね。 シリーズは続いて訳されるみたいなので、楽しみにしたい。 |
No.1 | 7点 | nukkam | |
(2023/12/18 02:02登録) (ネタバレなしです) パトリック・レインはアメリア・レイノルズ・ロング(1904-1978)の別名義で、エラリー・クイーンという有名な前例がありますがレインも作者名と同じシリーズ探偵の作品を全6作品書いており、本書は1945年発表のシリーズ第1作である本格派推理小説です。探偵役が盲目という設定が後半の謎演出でよく活かされています。文字通り吹雪の山荘状態の舞台に集まった人たちの間で怒涛の連続殺人がおき、しかも犯罪議論で語り合った殺害方法で殺されていくという派手な展開です。ロング名義の「ウインストン・フラッグの幽霊」(1941年)の論創社版巻末解説で、作者の特色の一つを「連続殺人の波状攻撃」と紹介していますが本書はその典型例です。推理に次ぐ推理で謎解きの面白さにも十分配慮されています。 |