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ミステリの祭典

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骨灰

作家 冲方丁
出版日2022年12月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 ◇・・
(2023/10/25 21:28登録)
舞台は、大規模再開発工事が現在も進行中の、東京・渋谷の駅ビル。その複雑さ、通行経路の分かりにくさから、しばしば「迷宮(ダンジョン)」と評される工事現場の地下深くで、不可解な事件が起きる。工事関係者らしき正体不明の人物が、インターネットに「人骨が出た穴」などと中傷目的と思われる不穏な書き込みを行ったのだ。
物語の主人公・松永光弘は工事を管轄する大企業の本社IR部に所属する、働き盛りの社員。理解ある上司に恵まれ、家では可愛い小学生の娘と身重の妻が待つ、順風満帆な身の上だ。
突然の調査を命じられた光弘が、執拗な熱気とちりに悩まされながら、都心の工事現場とは思えない地下最深部へと降りてゆくと、そこには巨大な穴が掘られた奇妙な祭祀場と、鎖につながれた謎の男の姿があった。
事件を契機に明らかとなる、怪しい宗教組織の暗躍や、駆逐される路上生活者の悲哀。知らぬ間に、事件の中心人物となっていた光弘と家族に刻一刻と迫る、超自然の魔の手。
骨灰が堆積する地下の穴は、新たな生贄を求めて、生き物のようにうごめく。かつてラヴラフトが、憑かれたように描いた地下世界の魔性を、現代日本によみがえらせた迫真の怪異譚だ。

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