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ミステリの祭典

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未来が落とす影
ダン・パードウ警部

作家 ドロシー・ボワーズ
出版日2023年11月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2024/01/05 13:34登録)
(ネタバレなし)
 1937年の英国。偏屈な老嬢で慈善家のレア・バンティングが死亡した。状況から毒殺の疑いがあり、容疑はレアの姉キャサリンの夫で、レアとも同居していた大学教授のマシュー(マット)・ウィアーにかかる。審理の結果、法廷で無罪を勝ち取ったマシューだが、口さがない噂から職を追われ、別の地方に引っ越した。だがその二年後、またマシューの周辺で不審な怪死事件が。
 
 1939年の英国作品。
 翻訳は意外に読みやすいが、出て来る登場人物は名前がある者だけで総数60人以上。
 その頭数の多さにも意味があるので、一概に悪く言えないが、錯綜する物語はいささかややこしい。『アバドン』の全体のバランスの良さがウソみたい。

 終盤のトリックと意外な真相は素直に驚けばいいんだろうけど、前述の登場人物の多さに演出の効果が薄れ、正直あまり盛り上がらなかった。
 ちなみに巻末の解説で危ぶんでいる(こんなことありえないだろ)部分に関しては、もっとすごい英国作品なんかもあるし、それほど「これは無し」ではなかった。フィクション世界のリアリティの枠のなかで、まあギリギリ、ありだと思う。
 この大技自体はけっこうスキである。

 これでこの作者の邦訳は、最初の『追伸』以外の3冊を読んだけど、個人的にはアバドン>本作>スケッチの順。

 残る最後の一冊は、当たりか外れか。

No.1 5点 nukkam
(2023/12/12 01:44登録)
(ネタバレなしです) 1939年発表のダン・パードウ警部シリーズ第2作の本格派推理小説です。いきなり余談になりますが、本書の論創社版の巻末解説を書いている幻ミステリ研究家の絵夢恵はおそらく海外ミステリの原書(多くは日本未紹介)を800作品もレビューした「ある中毒患者の告白~ミステリ中毒編」(2003年)を書いたM・Kと同一人物でしょう。2023年にやっと日本で翻訳出版された本書も既に20年以上も前に読破されているようですから畏れ入ります。人物描写や背景描写に優れているところは前作の「命取りの追伸」(1938年)にひけをとらず、手掛かりの配置やミスリーディングの技巧では進歩したように思えます。登場人物リストに載っていない人物が何人も関わっているかのような真相が複雑すぎてわかりにくいのが難点です。

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