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ミステリの祭典

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君のために鐘は鳴る

作家 王元
出版日2023年09月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 YMY
(2025/10/30 21:16登録)
最愛の妻を喪い、断筆したベストセラー作家が目を開けると、そこは小さな島。桟橋には高速艇から降り立った老若男女の集団が。どうやら一定期間デジタル機器から距離を置き、本来の人間性を取り戻そうという「デジタルデトックス」が目的らしい。会話、接触、読書、メモ、音楽、加えて殺生を厳しく禁じられた環境で生活が始まるが、やがて連続殺人事件が。
クレバーな筆致で予想外の方向から繰り出されるサプライズに、テクノロジーの発達が人類に及ぼす、知性、人格、存在、魂といったものに捉え方の変化について考えずにいられなくなる。

No.1 4点 nukkam
(2023/10/06 23:24登録)
(ネタバレなしです) マレーシアの女性児童小説家の王元(1980年生まれ)が2021年に発表した本格派推理小説で、島田荘司はコンピューター時代にあるべき「本格」の、新たな可能性を示した優れた思考実験であったと高く評価しました。アーネスト・ヘミングウエイの「誰がために鐘は鳴る」(1940年)を連想させるタイトルですが特に共通する要素はないように思います。デジタルの時代に孤島でアナログな生活をおくろうとする人々の間で起きる連続密室殺人を描いていますが、誰からも認識されず相手に接触することも声を聞かせることもできない不思議な語り手の存在を受け入れられるかどうかで読者の評価が左右されそうな気がします。豊富な謎解き伏線に丁寧に考えられたトリック(密室のシャワールームから消えるトリックは某米国作家の某短編作品(1940年代)を連想しました)など感心できた部分もありますが、頭がアナログな私にはついていけないトリックもありました。最終章のひねりもすっきりできませんでした。

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