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ミステリの祭典

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やかましい遺産争族
ハナサイド警視シリーズ

作家 ジョージェット・ヘイヤー
出版日2023年10月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2024/03/06 19:04登録)
(ネタバレなし)
 ネット(網)製造の大手企業「ケイン&マンセル」社の代表のひとり、サイラス・ケインが60歳の誕生日を迎えた。いまだ独身のサイラスは複数の共同経営者を押さえ込むやり手だが、会社の創業者であるケイン一族の中にはさらに上のトップがいた。サイラスの母ですでに80歳代の車椅子生活ながら、年を感じさせない活力で権勢をふるう老女エミリーである。サイラスの誕生パーティにはケイン家の親族や、ケイン&マンセルの関係者などが詰めかけていたが、やがてその周辺で、ひとりの命が失われる。

 1937年の英国作品。ハナサイド警視シリーズの第三弾。

 評者は本シリーズは、だいぶ以前に『グレイストーンズ屋敷殺人事件』のみ読了。そちらの印象は、全体的に筋運びが鈍重でイマイチ楽しめなかったが、終盤の大技でかったるさがぶっとんだ。
 つまりミステリとしては後半に光るもの? があったので、今回の新刊も、その辺の妙味がまたしっかり出てればいいなあ、と期待する。

 ただまあ多数の雑駁な登場人物をズラリと配置し、予期せぬ事件が勃発したケイン家の周辺を語るのはまずよろしい。
 ただなんというか、本作の場合、登場人物が一応はちゃんと書き分けられているものの、そんな連中の言動の積み重ねが読んでいて面白いか、ミステリとしての評価を稼いでるか、というところだが、まぁその辺が、どうも。

 二つ目の事件からさらに……の、お話のドライブ感などはなかなか良かったんだけどな。通読してみると、うーん、全体の構造として、イマひとつであった。後半、愉快なキャラを登場させて話をストーリーを賑わせようとする狙いは察せられたが、一方でその結果、正直、お話が足踏みする感じでもあり、なかなかカッタるい。

 二冊のみ読んだ時点で総体的な感慨を呈するのはまだ早いとは思うものの、その二冊とも、面白くなりそうでならない、一方でツマラナイと言い切るには賞味部分もないでもない……の印象。
 またしばらくしたら機会を見つけて、未読の邦訳二冊のどっちかを読んでみようかとも思う。

No.1 5点 nukkam
(2023/11/05 05:40登録)
(ネタバレなしです) 「キャラクター造形がすばらしくて会話が面白い」とドロシー・L・セイヤーズが高く評価していた1937年発表のハナサイド警視シリーズ第3作の本格派推理小説です。確かに個性豊かな登場人物が多く、なかでも謎解きに興味津々の14歳の少年ティモシーの存在感は際立っていますが、いくら作中人物が「生意気」と評しているといっても論創社版の大人に対する口調は度が過ぎていて不自然な翻訳に感じました(私のジジイ目線の方が不自然なのかなあ)。富豪一族で相次いだ死亡事件(1人目は殺人かどうか微妙ですけど)の背景は遺産争いかそれとも進展しない投資ビジネスか、動機を巡る謎解き中心のプロットですが初動捜査でちゃんと探さなかったのかといいたい凶器の唐突な発見や、仮に逮捕を免れたとしてもいつまでもごまかしきれるとは思えない犯人の秘密などあまりすっきりできない解決でした。

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