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ミステリの祭典

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黄色い家

作家 川上未映子
出版日2023年02月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 zuso
(2024/04/28 22:12登録)
様々な束縛によって歪んだ善意。そして絶望の闇に渦巻く悪意。
どんなに呪われたような日々であっても、そこには光が射し込む祈りもある。破滅に向かいながらも寄り添い生きる姿が激しく胸に迫る。

No.1 8点 HORNET
(2023/08/27 20:27登録)
 総菜屋のパートで生計を立てる独身女性・伊藤花はある日、「吉川黄美子」という60歳の女性が起訴されたというニュースに出逢う。その女性は、17歳の夏、花が親もとを出て頼った女性だった。風水を信じ、「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める共同生活を送っていた―世界が注目する作家が挑む、圧巻のクライム・サスペンス。

 冒頭の様相では、「黄美子」なる人物が少女たちを支配して異常な共同生活を強いていたかのような印象を受けるが、読み進めていくうちにその見方が誤っていたことに気付いていく。愛情はありながらも実質ネグレクトだった母親の元を離れた主人公・花が、生きていくために同類の少女を引き込んでいくうちに、次第に「支配する」側になっていく展開は非常に興味深い。とはいえ花に悪意があるわけではないところがこの物語の絶妙なところで、ラストにはミステリらしい落としどころも用意されている。
 困窮する生活環境の中で生き抜こうとする女性の姿を描く作品は多くあるが、いくつ読んでも飽きることはないと感じる。

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