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ミステリの祭典

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八角関係

作家 覆面冠者
出版日2023年08月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 人並由真
(2023/11/09 17:19登録)
(ネタバレなし)
 長女が探偵作家の三姉妹をふくむ四人の女性。警部補の刑事と、富豪の亡き父の遺産を継承した三人の兄弟。あわせて八人の男女が四組の夫婦を形成して、一同は親族の関係にあった。そしてそんな八人は、先代の遺した遺産を利殖に運用する三兄弟が所有する大邸宅に同居していた。もともとはそれぞれ互いに惹かれ合って結ばれた四組の夫婦だが、今は八人の男女のうちの大半が別の夫や妻の伴侶に劣情を抱き、三角関係の四組版「八角関係」を構成していた。そんななか、屋敷の周辺で、広義の密室状況といえる殺人事件が発生する。

 あの「妖奇」の姉妹誌「オール・ロマンス」に、昭和26年に連載された、覆面作家(正体は諸説あるが、21世紀の現在も未確定)による長編パズラー(B~C級? 昭和パスラー)で、72年目にして初の書籍化だとかなんとか。
(ジャケットカバーの表紙折り返しと解説に「76年ぶり」と書いてあるが2023マイナス1951で、72年ぶり、のような気がする……。)
 この話題性だけでご飯6杯はいける! ということでウハウハ言いながら読んでみる。
 
 評者が本文を楽しんだあとで目を通した巻末の解説によると、連載当時は「愛欲推理小説」および「愛欲変態推理小説」なる肩書がつけられていた作品だそうで、なるほど本編の方には中期以降の笹沢佐保やギアがかかった以降の西村寿行を思わせるムフフ描写がいっぱいで、小中学生は読んではイケナイ内容(とはいっても昭和20年代半ばの小説だから、エロといってもかわいいもんだが)。

 序盤数十ページは爆笑しながら読んだが、最初の殺人が起きるあたりからマジメ度が急に高まり、以降はいやらし描写を随所に交えながらも、かなりまともな謎解きミステリとして展開する。

 さるポイントに注目すると、評者のように冊数だけは読んでいる読者などでもある程度は作品の真相を察することもできるし、一部のトリックなども既成作品のイタダキだが、一方で、これだ、こーゆーものを読みたかった! といいたくなるようなバカミス度の高いメイントリックなどは、実に楽しい(笑)。nukkamさんのおっしゃるように、その辺りに絡む伏線の妙もいいよね。

 クロージングのサプライズも含めて、とても楽しかった。ちょっとゲテモノ気味ながら、実はけっこうマトモな作品で、こういうものの発掘は本当に嬉しい。
 こーゆーのが数年に一冊は読めればいいなあ。

 評点は実質7.5点。素晴らしい発掘企画と精緻な解説(ただしトリックで関連する既存作のネタバレに、実質的になってしまっているのが困りもの)で1点追加。
 8,5点を小数点切り捨てて、この評点で。

No.1 6点 nukkam
(2023/09/01 22:59登録)
(ネタバレなしです) 正体不明の作家によって1951年に雑誌連載されて2023年に初めて単行本化された幻の本格派推理小説です。連載中には愛慾推理小説とか愛慾変態推理小説とか宣伝されていたそうですが、主役である4組の夫婦の間に繰り広げられる乱れに乱れた人間関係がこれでもかとしつこく描かれ、時に謎解きの興味を削いでしまっています。しかし終盤のどんでん返しの謎解きはなかなか気合の入ったもので、特にYの章で説明される足跡トリックはインパクトがあります(無理矢理なトリックですが成立させる伏線をきちんと用意しています)。論創ノベルス版の巻末解説で「噴飯物」と酷評している最後の落としどころも確かに好き嫌いは分かれるでしょうけど強く印象に残ります(しかしこの解説、2回も登場人物の名前を間違えているのはなぜ?)。無難な出来栄えの王道的本格派にはもう飽きた、怪作系でも読んでみるかと考えている読者ならお気に召すかもしれません。

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