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ミステリの祭典

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悪人

作家 吉田修一
出版日2007年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 ぷちレコード
(2025/09/30 21:28登録)
出会い系サイトで知り合った女性を殺した男が、同じくサイトで出会ったばかりの別の女性を道連れに逃亡する。
この作品では、三人の主要人物が辿ってきた人生だけでなく、彼らの家族や友人、職場の上司などの脇役たちが、どのような人生を背負っているかということまで描いている。舞台が都会とは程遠い九州の田舎である点も大きい。決して脚光を浴びることのない一般市民の孤独な人生が、いっそう浮き彫りになっている。田舎の独特な閉塞感や風土、そこに暮らす人々の精神性の描き方がうまい。

No.1 7点 よん
(2023/07/20 13:54登録)
物語は、福岡市と佐賀市を結ぶ国道263号線の三瀬峠を中心に展開する。この場所の捉え方が作品のポイントだが、そこで保険外交員の若い女性が殺される。彼女はその夜、同僚二人と中洲の鉄板餃子の店で食事をした後、以前バーで知り合った大学生と会うと言って二人と別れるというのが発端。
だが、彼女が会う約束をしていた男は、大学生ではなく出会い系サイトで知り合った土木作業員だった。仲間に対する見栄でついた嘘が悲劇を招き入れる。
そして焦点化された人物と近い人物の一人称の語りが出てくるあたりから、一挙に加速していく。三人称的な描写と一人称的語りが絡み合って緊迫感を高めていくあたりは、作者の技量の高さを感じた。結末に近づくにつれ、その力に圧倒された。

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